「原作者キングの解釈による『シャイニング』の続編だが…」ドクター・スリープ Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
原作者キングの解釈による『シャイニング』の続編だが…
『シャイニング』の続編と言う触れ込みに期待して見ましたが、残念ながら期待外れ。無駄に長く緊張感に欠けるテンポの悪いストーリー展開に飽きて途中で何回も眠気と格闘しつつ三日かけて観了。
前作同様、霊能力ともテレパシーとも幽体離脱ともはっきりしない、曖昧な超常能力「シャイニング」がテーマにはなっているものの、大人になったダニーが主人公と言うこと以外、内容的にはほぼ前作と無関係。原作者キングの解釈による『シャイニング』の続編のようだが、何より前作のようなホラーですらなく、中途半端な超能力バトルものになっている。とにかく超能力の設定が雑で中途半端で、日本の漫画のような「能力バトル」的な奥深い駆け引き要素はほぼ無く、やってる事と言えば、お互いの頭の中に入り込んで「位置特定」合戦してる事くらい(笑)。
何より、今作の一番の難点は敵がショボすぎるという事に尽きる。子供の精気を食って長生きしてるだけの人間でもなく吸血鬼でも悪霊でもないと言う、よく分からない中途半端な連中で、悪役としての恐ろしさや魅力を何も感じない。辛うじて超能力っぽいものを使ってたのは女ボスと新しく仲間にした少女くらい。その少女も敵側のメインキャラになるかと思いきや、特に何の活躍の場も与えられず、最期にダニーの友人を道連れにした時に能力を使っただけ。他の仲間連中は全員がただの小汚いヒッピーにしか見えず、実際、敵の大半がろくに超能力すら使わないまま、素人ふたりの銃撃でほぼ壊滅(笑)。
ラストの舞台をホテルにしたのも無理やり感がある。女ボスを倒すのにわざわざホテルで戦う意味ある?しかも銃があれば簡単に倒せる相手なのに、何故かダニーは銃すら用意していかない。ホテルの悪霊たちを利用するのは良いけど、あんな直接的に襲い掛かって精気を吸うような存在だったか?と違和感ありまくり。ゾンビみたいな利用法が安易すぎて興覚め。前作では直接的に手を出せないからジャックを色々と精神的に追い込んでたんじゃないの?
何度も意味深に出て来る脳内棺桶?も戦いでまったく活用できてないし、どうせやるなら「女ボスを閉じ込めたけど相手の強大な力で内側から棺が破られる」みたいな演出にすれば、もっと相手の強さや恐ろしさを表現できたのにと思う。ホテルを舞台にするなら前作のラストシーンの謎(何故ジャックが過去の写真に写っていたのか等)に繋がるようなホテルの悪霊たちや過去話にこそ踏み込んで欲しかった。
キングが前作の映画版に不満だったからか、ラストを原作通りにダニーをボイラー室へ向かわせ、爆発させてホテルと運命を共にするエンドにしているが、長年悩まされて来た自分の能力で人を助ける事が出来たんだから、無理に自爆エンドになんかにせずに、能力を人助けのために有効活用していこうとする前向きなハッピーエンドにしても良かったのでは。
キング本人の原作でありながら、前作との絡みにおいて続編としてもテーマとしても見せ方が微妙に間違っている感じ。こうして見ると、正直、映画『シャイニング』としての完成度はキューブリックの非凡な演出センスありきの賜物であり、原作自体は凡庸と言わざるを得ません。