「かなり好きな映画」ジョーカー 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
かなり好きな映画
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ストーリー、演技、映像美、音楽全てが最高の映画。
序盤の不良にリンチされるシーン、アーサーのみすぼらしい身なり、狭苦しいバスでの移動、パトカーのサイレンが鳴り響くゴミだらけの街並み...。そういったシーンから、アーサーが苦しい生活を送っているのが十分過ぎるほど伝わってくる。そのため映画にリアリティが出せていて、序盤から引き込まれてしまう。この映画がとても面白いのは、アーサーが感じてきた苦しみの表現が秀逸で、共感できる部分が多いからだ。
アーサーはウェインの会社の鼻持ちならない社員を殺したことで、彼のように世間に不満を持つ人間からの熱狂的な支持を得るようになる。今まで誰にも相手にされてこなかったアーサーが、初めて世間の肯定的な評価を受けるようになり、自分の行った殺人は正しかったのだと思い込むようになる。だから彼は徐々にダークサイドに堕ちていったが、むしろ堕ちた後の方が彼にとっては幸せなのだ。ジョーカーとして悪の道に振り切った彼はもはや失うものが無いため、抑圧されるものが無くなって、以前の少し間抜けだったアーサーの面影は無くなってしまう。
映像美や音楽等の演出も秀逸。荒廃した街並みや落書きだらけの電車、後半になるに連れて明るい曲が増えていくのが、全てアーサーの心境を表せていて素晴らしかった。
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