「“狂気”というエクスカリバー」ジョーカー regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
“狂気”というエクスカリバー
聖杯伝説でのアーサーが、聖剣エクスカリバーを手にすることで王になるように、本作の主人公アーサーは、“狂気”というエクスカリバーによってジョーカーになる。
そういえば中世のヨーロッパでは、ジョーカーとは宮廷に仕える道化師を意味していた。
監督のT・フィリップス自身、『モダン・タイムス』や『タクシードライバー』などといった過去のマスターピースを参考にしたことを公言しているが、中でもやっぱり『キング・オブ・コメディ』が色濃い。
R・デ・ニーロ演じるコメディアン志願男の暴走を描いた『キング・オブ~』は、デ・ニーロ史上において最も気持ち悪いデ・ニーロが観られる最高の映画。
そのデ・ニーロを本作におけるキーパーソンの一人として配役するあたり、この監督、したたかすぎる。
監督の出世作『ハングオーバー』シリーズも、コメディなのにギャグが過剰すぎて引いてしまうシーンが多かった。あの映画に出てくるトラブルメーカーのアランは、ある意味ジョーカーの鏡合わせ。
その鏡合わせを、本作ではとことんまで追求していて、狂気ともギャグとも取れるラストのラストで、それがよく分かる。
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