劇場公開日 2019年10月4日

「他人事じゃない!!」ジョーカー のーるすさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5他人事じゃない!!

2019年10月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

 どん底に突き落とされ、八方塞がりとなり、心の拠り所となっていたものが次々と奪われていったら、自分ならどう立ち回るんだろう?そんな絶望を抱えても生きるという選択をした場合に、真っ当に生きる道など残されているものなのか?とか…。

 本作は決して犯罪者を称賛しているものでは無いし、アーサーの不幸な境遇を犯罪行為に対しての言い訳や免罪符として描いているものでは無いと言うこと。

 あくまでもアーサーが犯罪者(ジョーカー)に至るまでのメカニズムを見せ、怪物ジョーカーを誕生させた責任の所在を問うているだけなのです。

 生活に困窮し、絶望の果てにジョーカーに至った要因も全てアーサーの自己責任と切り捨てていいの?

 アーサーを困窮に追いやった政策を打った政治家や、その政治家を選んだ有権者(投票行動を起こさず、白紙委任した人々も)の責任は全く無いの?等々…。

 そんな本作も鑑賞前は格差社会を主題にした作品の主人公がジョーカーであることの必然性を感じませんでした。

 しかし、お馴染みのキャラクターを起用する事で、過去のバットマン作品でブルース・ウェイン(ウェイン家)=正義の人のイメージを植え付けられた観客を本作ではジョーカー側の視点に立たせる事で、例えそれが第三者からみて歪んだものとしてみえたとしても、立場が変われば相手に対する見方も変わり、善人にも悪人でもなり得る(本作でも用いられるジョーカーのセリフ、『善と悪は主観でしかない』)事が分かり易く伝わるし、
 幼きブルースがジョーカーと同じピエロに扮した名もなき暴漢に両親が惨殺されるのを目の当たりにするエピソードも、憎しみや悲しみが連鎖されていくさまを効果的に見せることにもなっていて、単に商業的成功だけを見込んでのDCキャラの登用ではないものだと感じました。

 ホアキン・フェニックス演ずるジョーカーも過去のバットマン関連作品の中でも一番、等身大の人物として描かれていて本作が持つメッセージを決しておとぎ話としてでは無く、より身近なものとして受け止める事が出来ます。

 そして彼が発する笑い声。誘い笑いや、ときに恐怖を感じる映画はあるけど、これほど悲哀に満ちた笑い声を聞いたことがない!!そして笑いに関する秘密が明かされたとき、私は涙をこらえる事が出来ませんでした。

 ※ なお、本投稿は他の映画レビューサイトで記載していた私自身の投稿が編集出来なくなってしまった為、こちらのサイトの場をお借りして同じ投稿を加筆修正したものです。

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のーるす