劇場公開日 2019年10月4日

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「彼はずっと泣いていた。」ジョーカー みーさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0彼はずっと泣いていた。

2019年10月9日
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鑑賞方法:映画館

笑ってる?
いや、あれはずっと泣いている。
悶え苦しむ気持ちが、笑い声から伝わってきた。
主人公は、人を笑顔にしたい、と楽しく生きようと努力するが、彼の身の回りに起こる出来事は反対のことばかり。よかれと思ってやったことが、裏目に出る。周りの人から気味悪がられ、嫌がらせされたり、暴力を振るわれる。
いつか誰かが、自分の声を聞いてくれる。
いつか誰か、自分のことに気づいてくれる。
いつか、いつか、変わるんだ!
そう信じて、何度も、我慢して我慢して我慢して我慢して我慢するのだけど、みんな、裏切る。
みんな、自分のことしか考えていない。
カウンセラーにも、友だちにも、仲間にも、好きな人にも、自分のことを理解されることはなく、愛してくれていると信じていた母親にも裏切られ、ボロボロにされる。
ああ、自分には味方なんていない。
私は誰からも、嫌われる。
もう抗うのは、疲れた。
これが私の人生なのか、と気づいた時
ジョーカーは、生まれる。
はじめからモンスターだったわけじゃない。
人間の醜さが、彼を生んだのだと思った。

「Why so Serious?」
ダークナイトでの、ジョーカーの言葉。
あの不気味な笑いの裏に隠れていた、真実をこの映画を観て知ることが出来たように思った。
「世間のモラルなんて人間の戯言だ。
足元が脅かされるとすぐにポイ。
たちまちエゴをむき出しにする。」
ダークナイトでも殺人の全てを、ジョーカーが手を下していたわけじゃなく、人が人を裏切り、殺しは広がっていった。人など信用できない。人はすぐ裏切る。
この映画のジョーカーとダークナイトのジョーカーとは一見少し違う気もするけど、双方はちゃんと繋がっていると思うし、ジョーカーほどのモンスターが誕生した、その背景が描かれていて、私は納得した。

主人公の、役者さん。
リヴァーフェニックスの弟さん。
はじめのカウセリングのシーン。
はじめから狂気の目。
これはヤバい人とすぐわかる。
電車で3人殺してトイレで踊るシーン。
サナギから蝶になるような、
人が生まれ変わっているように見えた。
さいご、街の暴動を車から見る表情は、
美しい景色を見るような微笑みで
やっと他人から注目を浴び共感を得られ、喜びを知る。
演技が、素晴らしい。

みー