「原作ファンではない人間から見たheaven’s feel」劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] III. spring song さなさんの映画レビュー(感想・評価)
原作ファンではない人間から見たheaven’s feel
元のシナリオを全部やっていない人間から見た感想です。なので原作を再現出来ているか、という点は評価出来ません。この映画だけを観た感想です。
※ゲーム(全年齢版)はHF2章の途中まではやってあります。アニメはZeroだけ観ました。
かなり説明省いたんだろうなあとは思いましたがそれでも素晴らしい出来だったと思います。元の膨大なテキスト量を2時間に収めようと思ったら無理も出ましょうが、原作のHFをやっていなくてもちんぷんかんぷんとまではならないと思われます。ちょこちょこよくわからないなと思うところはありましたが。
重要なところはこんな感じでしょうか。
・アーチャーの腕を使ったことで士郎は死ぬしかなくなった
・ナインライブスや宝石剣ゼルレッチ、ルールブレイカーを投影するごとにどんどん死に近付く
・桜は士郎が投影したルールブレイカーによりアンリマユとの繋がりを断たれ、命は助かる
・言峰は自身のような「生まれながらにしての悪」である存在が自らをどんな存在であると認識するのか、その答えを知りたかったので大聖杯を破壊しようとする士郎と対立
・魂を物質化する魔法ヘブンズフィールにより士郎は魂だけ救われ、それを器に入れることで衛宮士郎という人間は生き返った(?)
合ってるかは分かりませんがざっくりこんな感じなんでしょうかね。
素晴らしい所は多々あるのですが全体の解釈は「春はゆく」におまかせです。
ギリギリまで桜の季節に公開しようと努力した気持ちもよくわかります。梶浦さんは本当に何者なんでしょうか。
形はハッピーエンド(姉妹は仲直り、士郎が隣にいる、一緒に桜を見に来れた)なのに、桜はお墓参りでも着ていた白のワンピースと黒のカーディガンという服装(喪服?)で、自分が殺したとも言える愛しい人と一緒に桜の中へ一歩踏み出す。これからずっとその人の隣で殺めた人々への贖罪のために生きていくという、罪や人生の重さを感じさせるいいエンドだなと思いました。原作をちゃんと最後までやればエンディングの見方も変わるのかもしれませんが、映画を見た限りだとそんな印象を受けました。
ところでこの作品は第一章、第二章とも、見所のひとつにサーヴァント同士の戦闘シーンがあります。今作で自分が特に何回も観たいと思ったところはライダーさんとセイバーオルタのシーンですね。
これまでランサーと真アサシン、バーサーカーとセイバーオルタなどいくつも素晴らしい戦闘シーンがありましたが、自分的には今回のこれがいちばん好きです。ライダーさんほんと格好いい。第一章ではあっさりセイバーにやられてましたし、第三章のはじめでは無抵抗で後ろからセイバーオルタにざっくり刺されますし、他のルートでは輝くところがない分、感動もひとしおです。宝具の演出格好よすぎ。
そしてここは作画が素晴らしいだけじゃなくて他にも印象的だったのがセイバーオルタが士郎にとどめを刺される寸前に正気を取り戻したかのように「シロウ?」と呼びかけるところです。パンフレットには、朝起きて、目の前に士郎の顔があったから「シロウ」と呼びかけたくらいの印象なんだと書いてありましたが、切ないというか感情を掻き立てるものがあって聞いたときはびっくりしました。
他にもアーチャーの「ついてこれるか?」に胸が熱くなったり、凛が桜にリボンの話をするところでうるっときたり、桜と士郎の「生きろって言うんですか」「そうだ!」のやり取りのあたりがレインと同じ構図で、おお……となったり、イリヤがアイリスフィールと会えた描写があって感慨深かったり、多くの見所がある作品です。
自分は第二章が公開する少し前にようやくまともにFateに触れた初心者ですが、この映画は空気感や映像美も相まってよくあるアニメ映画とは違う作品になっているのではと思います。奈須さんも邦画と表現してましたが、その通りだと思います。とにかく全部の章にそれぞれの魅力があって制作側の熱も感じる細やかな作品です。
自分のようにたぶん半分も話を理解できていないファンとは言えないような人間でも楽しめる作品なので一章を見て作画がすごいなあとか雰囲気がいいなあとか、惹かれるものがある人は他のシリーズも全部見てみると理解が深まるのではないでしょうか。
とりあえず自分は映像作品としてのheaven’s feelは完結したということでゲームの方も最後まで進めてしまいたいと思います。