「印象に残ったのは白ヤギさんかな」キングスマン ファースト・エージェント odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
印象に残ったのは白ヤギさんかな
キングスマン3作目は諜報機関キングスマン発祥の物語、一作目はまさに若者世代の007としてユニークなスパイアクション・エンタテインメントでした、劇中で「007は悪者が主役、悪いほど面白い」と悪役本人が言っていましたがマシュー・ボーン監督のポリーシーでしょう。
本作でも凄い悪役、しかも歴史上も有名な人物を集めています。スペクターのような闇の教団が第一次大戦を裏で操る設定、ロシアの怪僧、ラスプーチン、女スパイ、マタ・ハリ、セルビアのテロリスト、ガヴリロ・プリンツィプ、ロシアの革命家、レーニン、ドイツのニセ預言者、エリック・ヤン・ハヌッセンなど最後にはヒットラーも登場とは恐れ入りました。
2作目のゴールデンサークルはアメリカニズムを虚仮にしたおふざけが過ぎるブラックコメディ調でしたが、本作でもウィルソン大統領が参戦しないのはマタハリのハニートラップに嵌められたからと、きつい設定を入れましたね。
前半はキングスマン創始者のオックスフォード伯爵父子の平和主義を巡る葛藤がメインでちょっと退屈、てっきり息子のコンラッドがキングスマンの統領になる話と思っていたら味方に撃たれて戦死とは、予想を覆すのがマシュー・ボーン監督の手法なのでしょうがひどいですね。
アクション・シーンは中世騎士物語のようなチャンチャンバラバラがメイン、まあ、剣の舞と言ったところでしょうか。
面白かったのは闇の教団のアジトの高山に棲むシロイワヤギ、スペクターのペットは猫でしたが本作はヤギ、ヤギは神話の時代から邪神、悪魔の象徴のように描かれてきたから使ったのでしょう。アジトを突き止める証拠にもなったマタハリのカシミヤマフラーの原料だったのでしょうが、角を切られた仕返しのごとく悪役のボスを一撃してピンチの伯爵を救っていました、動物の混ぜ方も秀逸です。2時間を超える長尺、戦場シーンは「1917」のようでもあり、終盤の飛行機シーンはミッションインポッシブルもどきでハラハラ・ドキドキ、実に様々な映画の要素を詰め込みましたね、マシュー・ボーン監督の作家性なのでしょうが恐れ入りました。