「あくまで誕生前夜の物語。それを面白いと思えるかどうか?」キングスマン ファースト・エージェント 九段等持さんの映画レビュー(感想・評価)
あくまで誕生前夜の物語。それを面白いと思えるかどうか?
人によって冗長に感じる理由の1つは、1作目・2作目のような、組織力を活かした諜報やアクションを期待してしまうからなのかも知れません。
キングスマンの誕生前夜を描いた今作。
当然ながら組織としては何もない状態です。
お馴染みのお店の外観・内装こそ、現代とほぼ変わらぬ姿で登場しますが…ラストシーン直前までは名実ともに「ただの超一流テーラー」でしかありません。
仕方ないとは分かっていても、これまでの作品で感じられた「キングスマン」という名前への誇りや使命感みたいなものが、若干遠くなっているのが寂しさに繋がっているのかなと思いました。
肝心のストーリー展開も面白くなくはないのですが、人が亡くなる原因が明らかな計画不足や事前に防げたようなミス、不幸すぎる勘違いだったりと、やや消化不良でした。
現実の人間、或いは戦争などそんなものかも知れませんが、やっぱりそこはエンターテイメントとして期待に応えてもらいたかったところです。
黒幕もラスト近くまで隠すわりにはわりと早い段階で怪しい人物が出てきて、しかもちゃんと予想を裏切らない。
なぜ彼があのポジションにいて、どうやって羊達を飼い慣らしていたのかもっと知りたくなりました。
また、もしこれから観られる方がいらっしゃるならば、第一次世界大戦前後の欧州史を事前におさらいしておくことをお勧めしたいです。日本では近代史の教育が疎かにされがちですので、簡単におさらいしておくとストーリーへの理解も早いように感じました。
と、ここまでつらつらと感想を記してきましたが、なぜキングスマンという組織が出来たのか、どこを目指して諜報活動に取り組むようになったのか、本作で明かされた由来に納得できたのはとても良かったです。
最後のお店のシーンは期待通りのキングスマンでした。
気付けば首都圏でもわずか2館、ともに1日1回の上映となってしまいましたが、人の入りはそこそこで人気シリーズであることを実感。
コロナで公開まで2年近く待ちましたが、ぜひ次回作は早めに観られることを願っています。