「KINGSMAN AWAKEN」キングスマン ファースト・エージェント Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
KINGSMAN AWAKEN
キングスマン・シリーズ
2014年に脚本から関わるマシュー・ヴォーンが
メガホンを取り始まったコミック原作シリーズ
ロンドンはサヴィル・ロウの11番地にある
表向きはテーラーの「キングスマン」は
世界平和の為に人知れず活動する秘密組織の
スパイアクション
1作目はタロン・エジャトンの出世作となり
アカデミー俳優コリン・ファースも活躍
どこか陰鬱な方向性になりつつあった007
シリーズに代わる娯楽性が受け
(ちょっと下品と言われつつ)大ヒットを記録
今作はそんな「キングスマン」誕生の
1900年代初頭を舞台にした誕生秘話
内容は第一次世界大戦前後の時代背景を盛り込み
そもそも何故秘密裏に行動する必要があるか
という大前提から入って家族との絆と
すべきことへの使命感を両立させながら
上質のアクション映画に仕上がっていました
特有のお下品さも今回はほぼなく
驚くほどストイックだったと思います
大英帝国繁栄を信じて侵攻・侵略・植民地化の
ブリカス一直線だったころのイギリス
それは各地に憎悪をかき立てるに十分なものでした
祖国の発展を信じて最前線で血みどろの戦いを
やってきたオックスフォード卿は
ある日自分のしてきた過ちに気が付き
すっかり争いごとはやめて人種差別を憎み
戦地へ救援物資を送る仕事に家族ぐるみで
勤しむようになりましたが
ある日の物資輸送中襲撃に
妻が自分と息子コンラッドの
目の前で銃弾の犠牲になります
その際「息子を戦争からあなたが守って」
と卿は妻から託されます
その12年後成長したコンラッドと
スーツを受け取るためサヴィル・ロウの
仕立て屋「キングスマン」を訪れます
スーツに身を包んだコンラッドの立派な姿を
妻に見せたかったと目を細めていると
店で盟友キッチナー元帥に「偶然」出会い
キッチナーは二人で話がしたいと
店に断って二階の一室を借ります
そこで新たな戦禍の予感を伝えられ
それを引き起こそうとする組織の存在も
打ち明けられます
戦争が始まるという事は息子も
戦地に赴くという事ですが
その息子コンラッドはその時が来たら
戦場へ向かう事をためらわぬ意思を示し
卿を悩ませます
そんな折その組織のセルビア人の構成員による
オーストリア皇太子の暗殺事件が発生
第一次世界大戦のきっかけとなった
サラエボ事件です
ここで抑えておかなければいけないのは
史実上の支配者
大英帝国のジョージ5世
ドイツ帝国のヴィルヘルム2世
帝政ロシアのニコライ2世
この3人は本当に親戚同士で
本当によく似ていたそうで
(作中も皆トム・ホランダーが3役を担当)
第一次世界大戦は簡単に言うと
セルビアを実効支配していたオーストリアの皇帝が
セルビア人に暗殺されたことで起こった
報復合戦をきっかけに起こった代理戦争が
どんどん膨らんでいき
ルールも協定も何もない戦争をやった結果
毒ガス攻撃などなんでもあり
全軍で1000万人以上の犠牲者を出しました
「親戚同士で行った戦争」でです
戦場で戦いたがるコンラッドは
消極的なオックスフォード卿に
いつまでも子ども扱いしないでほしい
と意見しますが
卿は何もやっていないわけではなく
諜報にすぐれた才能を持つメイド(?)
のポリーやショーラを駆使し調べ
ロシア皇帝に近づいてほぼ操っているかの
ようにする「怪僧」ラスプーチンの存在を
突き止め元凶であるとし暗殺を決意します
ですがなし崩し的にコンラッドも参加する事に
なってしまいます
このラスプーチンがまあインパクト十分
インチキなのか本物なのかわからない奇術
男色なのかそうじゃないのかわからない趣向
バレエのピルエットのように戦う様
これは余談ですが昔歴史上の偉人たちを
モデルにしたキャラクターが戦う
「ワールドヒーローズ」という格闘ゲームで
色物キャラとして知られたラスプーチンを
実写化したらこんな感じなのかなと感動しました
苦労の末ラスプーチンはなんとか倒しますが
あれっこの映画ラスボスこの人じゃないの
という外しも色々ありました
オックスフォード卿は妻を亡くした時に
負傷した足を治してもらってたりします(笑)
こうして戦争は回避されたかと
思いきやその謎の組織も人材が豊富で
あのロシア革命の立役者レーニンや
ハニートラップの元祖マタ・ハリなどを
つぎ込み結局戦争は避けられず
ロシアへ動いたキッチナーも海上で謀殺
コンラッドも引き留めもむなしく戦地へ赴き
悲劇的な最期を遂げてしまいます
オックスフォード卿は心痛から
酒浸りになりもう英国は終わりだと
落ち込みますがコンラッドの戦場での努力が
まだ戦争終結に繋がっているとわかると
奮い立ちその諸悪の根源である
「羊飼い」を倒しにアジトへ乗り込みます
このあたりから政治でもってしても戦争を
回避することが出来ない事態になっても
独自に目的を達成するというキングスマンの
大元が出来上がったことになります
まあ結局黒幕を倒しキングスマンは
オックスフォード卿が店を買い取り
円卓の騎士のコードネームで呼び合う
組織が始まるところで話は終わります
前の2作ももう一度見返したくなるような
出来だったと思います
エピローグで更なる黒幕の存在まで
引っ張るのですが
あれは蛇足かなと思いました
あまりに似てなかったしw