「早見再生1.3倍速で観ればマシに見えたかも?」バースデー・ワンダーランド 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
早見再生1.3倍速で観ればマシに見えたかも?
もう見事につまらなかった。驚くほどに面白くなかった。
冒険活劇としての昂揚感もなく、一瞬ロードムービーかと見紛うほどの緊張感のなさ。そして何よりこの旅をするのが主人公アカネでなければならない理由が見当たらないのが大きな欠点。それはエンディングで示唆される「理由」とは別の話。緑の風の女神として選ばれておきながら、この旅において「アカネでなければ成し遂げられなかったこと」や「アカネでなければ救えなかったこと」がほぼ無いに等しいのだ。普通の女の子が異世界へ連れ去られ冒険の旅に飛び出るということの意味こそ理解できるものの、全体的にアカネがいてもいなくても十分冒険が成立してしまう内容。しかもまともに筋道の通らない内容。「前のめりのイカリ」なんてアイテムを出してはいるものの、アカネがそれによって勇敢な行動に出たなんてこと、せいぜい水切りの儀式の後の一度くらいでは?ホント王子がイケメンで良かったですね(いっそ金髪青い目の眉目秀麗な王子の耽美なメルヘン・アドベンチャーにすれば良かったのに)。そしてまたその水切りの儀式がまた何の惹きもない退屈な儀式でまったく盛り上がらない。
内容自体も退屈だけれど、この映画はとにかくテンポが悪い。音楽でいうところのBPMが本来求められるよりルーズで遅いので必要なスピード感が出ず、早見再生1.3倍速で観ればちょうどいいのではないか?と思うほどチンタラしていた。これでは冒険活劇としても盛り上がらないし、恐らく笑わせようとしているであろうと思われるシーンもリズム感がなくてまったく楽しくない。
「色」を失いかけた美しい異世界を旅していく中で、その世界の「美」を映像からほとんど感じられなかったのも痛かった。鶏頭の鮮やかな赤こそ確かに美しかったが「こんなに美しい世界ならば何をしてでも守らなければ!」と思わせてくれるものがないので、物語に入り込めず。作品を最後まで見て、結局一番美しかったのはこの映画の宣伝用ポスターだったな、と思うほど。
辛うじて良いと思ったのは、冒頭の僅かなシーンだけだ。現代の女子小学生としての日常の息苦しさを手際よく切り取り、娘の仮病を見透かしながらもゆらりと対応する若き母親像もどこか現代的で、あのまま現代を生きる等身大の小学生の「日常」の物語としてこの映画を見てみたかったと率直に思った。アカネが成長するのに、異世界は必要なかったのではないか。
声の演技を担当した役者たちの芝居も含め、良いところを探す方が難しいレベルで心底面白くなかった。☆2より低い数値をつけるのは少々躊躇いながらも、やっぱり☆2もつけられなかった。