劇場公開日 2019年9月20日

  • 予告編を見る

「劇的には描きづらい些細な成長のプロセス」エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ MPさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0劇的には描きづらい些細な成長のプロセス

2019年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

生まれたときからWEBやSNSが存在する世代を"ジェネレーションZ"と呼ぶらしい。実態を隠したままの自分を広く発信できる彼らだから、現実と虚構の間で悩むこともないのかと思いきや、人はそう簡単でもないことがよく分かる。この映画は、中学最後の年をそんな風に悩みながら暮らすヒロイン、ケイラが、少しだけ自己を肯定し、一歩前進するまでを描いて、内面の成長がどれだけ価値があるかを伝えてくれる。人からどう見えるではなく、自分は自分をどう見ているのか?これは、別にケイラに限った問題ではない。誰にとっても、永遠の命題なのだ。そんな劇的には描きづらい些細な成長のプロセスをカメラが掬い取った本作は、青春映画というジャンルを大胆にアップデートした野心作。身も氷るようなスクールカーストの恐怖、不器用だが温かいシングルファーザーの眼差し、等々、細部の描写にも並外れたセンスを感じる。

清藤秀人