「文化の翻訳可能性と不可能性」THE UPSIDE 最強のふたり AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
文化の翻訳可能性と不可能性
元の仏映画「最強のふたり」の原題はIntouchables。仏語で「触れ合わない、触れられない」の意味だそう。全身麻痺で外の世界との接触をほぼ断っている富豪フィリップと、底辺のアフリカ系移民で疎外された存在のドリス。そんな二人が出会い、壁を乗り越えて心が触れ合う関係になるという反転が面白さと感動の核になっていた。
リメイク版の「The Upside」はどうか。介護人役のケヴィン・ハートは、成功した黒人コメディアンというパブリックイメージがあり、触れられない、疎外された存在からは離れてしまった印象だ。米仏の社会における黒人の立ち位置の違いがあり、単純に置き換えただけではニュアンスが変わってしまう。仏映画で米国の黒人バンドであるEW&Fの曲が流れて踊るという文化的ギャップで楽しめる要素も、やはり翻訳しづらい要素だっただろう。
丁寧なリメイクだが、魅力の核があいまいになったように感じた。
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