劇場公開日 2019年9月6日

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「影が行く」SHADOW 影武者 バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5影が行く

2025年7月13日
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鑑賞方法:映画館

興奮

驚く

斬新

アクション映画ではなく、きわめてアートなドラマ映画で、終盤までアクションシーンはほぼ無く、クライマックスにしてもアクションが映画の肝ではない。シェークスピア悲劇のような話で、特に前半はどちらかというと凄まじい緊張感の中、静謐に物語が進んでいく。水墨画を意識した映像は限りなくモノクロに近く、文字通り美しい絵画を観ているようだ。

物語は三国志をモデルとしつつ全くの架空世界の話。境州をめぐる沛国と炎国の争いの中で、沛の都督とその影武者、都督の妻、沛王、その妹、和平派の重臣、開戦派の将軍、境州を預かる炎の将軍とその息子、それぞれの思いと陰謀と秘めた心が複雑に絡み合う重層的な心理劇となっている。男たちはどいつもこいつも権力とか戦争ばっかり考えてる中で、女2人はそれとは異なる動機で動いているのが印象深い。チャン・イーモウはいつものごとくスン・リーとクアン・シャオトンの女優2人をとても美しく撮っているが、特にヒロインの都督の妻役のスン・リーは美しさが際立っている。

なんというかエンタメ映画と見せかけて、これだけ莫大な金をかけたアート映画を作るなどという人を食ったような真似は、資質的にも立場的にもチャン・イーモウにしかできないだろう。興行のことなんか考えず、あらゆる条件を利用して自分の作りたいものを自分の作りたいように作る。そして結果的にそれが評価されるというのがなんともすごいし偉い。とても面白かった。

バラージ
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