「量子力学の入り口だけでも予習推奨(ゾーイの夢)」エスケープ・ルーム bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
量子力学の入り口だけでも予習推奨(ゾーイの夢)
何で4DXっきゃないん?なんて、当然の疑問を抱きつ、あのウザすぎる4DX予告に堪えて鑑賞開始。途中で気づく。4DXの派手な演出で誤魔化せ!作戦な映画なんだね。
クイズ・パズル・トンチを解いての脱出もの。チームには善人も居れば悪いヤツも居て、協力したり反目し合ったりしながらゴールを目指します。短時間で、そんな謎解けねーよとか、ムリです無理無理溶けません!、とか。合理性の欠落には目を瞑って頂戴。って言う映画。「ハンガーゲーム」を思い出してしまいました、なぜか。でも、4DXの迫力と人間模様に引き込まれて、結構手に汗かいたし、興奮した。
天才少女的存在であるゾーイ役の、テイラー・ラッセルが可愛い。なんか、このとろんとした目が好き。時系列上は、理系女子である彼女が「量子論」の講義を受けている場面から物語は始まります。が、己の記憶力の無さが情けない。教授が彼女に話す内容は、後々への伏線だと判っていながら覚えられなかったと言う。マジで忘れたw
でも、その核心は、量子物理の入口も入口の考え方の問題です。
In-Process-OutのProcess部分を「作用素」と呼ぶとします。通常は、プロセスで何らかのモノがInに働きかけてOutとしては違うものが出て来ます。「リンゴ(In)」の「皮をナイフで剥けば」(Process)、「かわの無いリンゴ(Out)」になります。これに対して、Inに正しく何らかの作用素が働きかけた結果、同じものがOutとして出て来たとします。その時、この一連の流れを「固有状態」と呼びます。
脱出ルームに入ったゾーイたちは、そこで謎を解き、部屋から脱出します、全員じゃないけど。これが作用素。
幾つの部屋を脱出したとしても、「仕掛け人と参加者の関係」には変化が無い。これが「固有状態」。
量子力学とは「固有状態である波動関数を探す事」と言う言い方も出来ます。大学の部屋の中でルームメイトにゾーイが力説していた数学の証明問題とは、「その様な波動関数が存在しない事の証明」。固有状態となる波動関数が存在しなければ、物質の存在の普遍性が量子レベルで否定されることになるからです。多分。おそらく。よく判らんけど。
ってことで、ゾーイは「固有状態」にある仕掛け人と参加者の関係を壊しに行く訳ですが、それって、まさに大学の部屋でルームメイトに語っていた彼女の夢、そのものです。
ご都合主義だし、派手な絵面で誤魔化しに来てはいるんですけど、カメラを壊して回るゾーイの姿を見ながら、「固有状態を否定する数学的証明」の話を思い出して、ちょっとゾクゾクっとしました。
テイラー・ラッセルがタイプだったので、☆半分おまけ。
今日も、理系と漢字で攻めてみました。
スキでやってる訳じゃないんですけど、そう言う映画だったからw
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ザックリかみ砕き追記
ある物に何かが作用すれば、その結果、それは違う何かになる。ってのが普通の物理・力学の世界の話。量子の世界では、「何かが作用したとしても、最初の物から何ら変化が無い状態」があると言う考えがあります。
ゾーイの夢である数学の証明問題は、変化が無いなんて有り得ない、と言うもの。つまり、何かが正しく作用すれば状態は必ず変わらなければならない、と言う証明。
ゲームマスターと参加者の関係と状態を変えるために、カメラを壊して死んだふりをするゾーイの行為は、彼女の夢である数学の証明問題と同じです。
って、かなりザックリ丸めると、そう言うストーリー仕立ての映画でした!