シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢のレビュー・感想・評価
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期待以上に楽しめました。
暗い蛍光灯のような室内プールに、ポッコリお腹のおじさんたち。日本の「ウォーターボーイズ」は、ここまで見た目は悪くなかったかも…。序盤の印象は、コメディとして割り切ってあまり期待せずに観ようというものでした。
彼らの地味な職場。トレーニングをする山脈の見える荒涼とした渓谷の河原。太陽光を浴びることのない寒そうな風景の連続というのが、徹底しているなあと思いました。
それだけに大会に向かうバスから望むノルウェーの海沿いの風景や、プールの照明、帰り道の朝の場面がとても印象的で美しく感じました。
また、様々なアングルでとらえた、プールやシンクロのパフォーマンスは、劇場のワイドなスクリーンで観ると見応えがありました。
競争が苦手なライダー志望の介護士とか、切ないのに面白く感じる要素が散りばめられて、冴えない登場人物達が、じわじわと魅力的に見えてくる映画でした。
中年世代への応援歌
上映前に、瓜二つののイギリス制中年男性シンクロ映画の予告編が流れた。しかも、「ミドルエイジの皆様出番です」みたいなキャッチコピーまでそっくり。元ネタ被りらしいのでわざと揃えてるのか?まあ、お国柄の違いなど気になるし、機会があれば見てみたいと思うが…。
さて本編。
鬱病を患い失業中、求職活動も芳しくない中年男・ベルトランが、ふと目に止まった男性シンクロチームに参加する。チームメイトは皆同じような中年男性、加えて女性コーチも、各々に人生の問題を抱えていて…。
彼らの上手くいかない日常と、それをチームメイトに打ち明けるセラピー的シーン、シンクロの練習風景が取り混ぜられて展開していくのだが、一人一人に焦点をあて、順序よく語られていくのではなく、同時進行でバラバラとエピソードが提示されていくので、少々解り辛い。
もっとも、ごちゃごちゃになっているのはエピソード構成だけではない。彼らの人生そのものが破綻の最中だし、シンクロチームの先行きも、始終問題起こりまくりのドタバタ展開。
それらが努力によって劇的に改善されていく話ではない。各々の性格の欠点も、治るわけでなくそのまま。ただ、互いに愚痴を言い、慰めあい、個性を許容し、時に衝突しながら、なんとなくチームが形を保っている。
コーチの二人も、一人目は叙情的な詩を読み聞かせ、そこそこに練習を進めるような穏健派(?)、彼女の元シンクロパートナーである二人目は、「みっともないメタボども、努力の意味を教えてやる!」と、常に怒号を飛ばすスパルタ系。どっちもどっちだろうと思うが、二人揃うと、何となくバランスが取れたのか、何故か順調に練習が進んでいく。
迎えた世界選手権。本番直前まで滅茶苦茶だ。チームの要選手は、緊張のストレスであわやボイコット。プールのそでで、他チームの颯爽とした演技に圧倒されてガクガクブルブル。
ところが、コールに応えてプールサイドに進み出た瞬間からは一味違った。
正にシンクオアスイム、動きを止めて沈むか、泳ぎ続けて浮くかの状況に置かれた彼らは、今しか見ずにひたすら必死に泳ぐ。
土台役は水中で息を詰めてチームメイトを持ち上げ、リフトされた選手は華麗にダイブし、互いの手を握り、腕をつかんでフォーメーションを維持する。
演技を終えて水から上がった彼らを迎えたのは、観客の大歓声とスタンディングオベーションだった。
翌日。期待して開いた新聞に、彼らの大活躍を報じる記事はない。世間の英雄にはなれなかった彼ら。
けれど、ネットで中継を見ていた家族に、同僚に、認められ少し変化した関係と、取り戻した自信を携えて、人生のプールを泳ぎ続けていく。
同じくミドルエイジの身としては、彼らの不安や悩みに、あるある、解る…と共感できる部分もあり、些かご都合主義ながら、明るい展開で終って良かった。
無理矢理な問題解決ストーリーではなく、ありのままの自分で、もう少し頑張れるよ!とホッコリ希望を与えてくれるのもいい。
後半になるにつれ上がり調子になっていくので、後味も悪くない。元気を出したい時に見るにはいいかも。
情けなくも愛すべきおっちゃん達のドタバタ劇に始終笑いを誘われたが、結構ブラックジョークが多く、私には笑えないなーという部分も。
個人的には英題の『Sink or Swim』は良く表せていると思うので、放題のサブタイトルは要らないなぁ…。
原題は『Le grand bain』、大きな風呂の意味だそうだ。プールも人生もおっきな風呂程度のもんなんだから、溺れず行こうぜーとのエスプリだろうか。
肩透かし感
素直な感想は「思ってたのと違う」。
コメディにしては大きく笑わせるシーンは無い。全体的にニヤリ、くすり、と笑うシーンはまあまあ有る。
キャラクタの個性は豊かで演じる俳優陣もマッチしている。
ただ、ストーリが遅々として進まない。気付くと世界選手権なのだが、観ているこちらに彼らの技術的成長は一切伝わって来ない(人間的成長は存分に描かれている)。
世界選手権の競技のシーンは見応えが有る(音楽の力も大きいが)。ただし他国の演技は空気。
コメディでもスポ根でも無く、どちらかと言えば日常系。お国柄って事かな。
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