たちあがる女のレビュー・感想・評価
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アイスランドの雄大な自然をバックに戦う女ランボー、"山女"がカッコイイ!
アイスランドのド田舎でコーラス団を指導するハットラ。彼女は地元にある精錬所に対して送電線切断等の営業妨害を繰り返す環境テロリスト"山女"という裏の顔を持っていた。日々警察の追及を躱しながら危険な破壊活動をたった一人で続ける彼女のもとに一通の郵便が届くが、それは4年前に申請した養子縁組成立の知らせだった。養女候補はウクライナで家族を失った4歳の孤児ニーカ。母親になることをすっかり諦めていたハットラは一念発起、精錬所との孤独な戦いに終止符を打つべく立ち上がる。
牧歌的な人間ドラマかと思いきや全くそんなことはなく、人が死なない『ランボー』みたいな物語だったのでビックリ。ベラボーにタフでカッコいいハットラさんが気が遠くなるくらい壮大な自然の中で命懸けの環境テロを繰り返す様がとにかく圧巻。しかしそんなアクション要素だけではないのがこの作品の奥深いところ。ハットラさんのテロ活動と何の関係もないのにやたら逮捕されるスペイン人バックパッカー、印象的な劇伴やコーラスが流れてくると必ずカメラに映り込むトリオバンドや民謡コーラストリオ等シュールなコメディリリーフもバンバンブチ込んでしっちゃかめっちゃか。最後はこうなるかな?という予想をニアミスで裏切る展開からしっとりしたドラマにシフトして印象的なカットで豊かな余韻をスクリーンに残して終幕。アイスランド・フランス・ウクライナ合作映画なんて多分初めて観たと思いますがこれは凄い傑作。作品テイストはだいぶ異なりますが、音楽テロリストグループと音痴の刑事が対決するスウェーデン映画『サウンド・オブ・ノイズ』と通底する突き抜けた爽快さを持つ豪快なのに繊細な作品でした。
正義とユーモア
たちあがるというか、初っ端から完全に主人公はたたかう女である。やっていることに共感はできないし、映画も取り立てて彼女を肯定して描いているわけでもなく、過激すぎる環境活動家としての主人公と、合唱指導をし養子を求める主人公は当たり前のように同じ人物である。この作品は彼女の行為を正義として描かない。むしろものすごく突き放している。それが彼女を一層過激な行動に駆り立てる、という構造になっている。過激な活動をする意味とは何なのか考えてしまう。
この映画の面白いところは、過激な女性のアクションであれ緊迫したシーンであれ、劇伴を演奏する楽団と歌手が登場するメタ演出である。どこにでも当たり前に登場し、ただ弾くだけでなくどことなくユーモラスな動きを見せるこの音楽隊が、どう考えてもシリアスにしかなり得ない物語の内容を和らげている。
そして双子の姉と「いとこもどき」。双子は絶対に伏線と思ったが、それだけではない、主人公と相対する存在であり、いとこもどきの存在もまた、主人公の人間たる側面を見せてくれる。
このラストがいいのかは正直分からないが...ストーリーテリングとしてはありかな...。
ジョディ・フォスターがリメイクするそうだ。ぴったり過ぎる。
正義感とユーモアを交えた、痛快ヒューマンドラマ。
BGM演奏者の登場や ツッコミ無しで進むシュールギャグは面白い。ただ本筋があと一歩……
歌の先生をしてるおばさんが自然を破壊する工場反対のため送電線を切断したりしちゃう話。
シリアスな設定/物語なのに、ザ・おばさんがマジなテロ活動してる絵がシュールでフフフ、となる。自分はコメディとして受け取りました。
バードマンと同じようにBGMの演奏者が物語と関係なく画面に映る演出があります。
面白い演出なんだけど……多用しすぎでちょいしつこいかなぁ、とも。ある種、この表現に逃げてる印象もありました。
演奏クオリティは素晴らしい。
特にドラムの演奏がすごいです。JONSIソロで叩いてた人みたいに手数多い。おそるべしアイスランド……。
BGM演奏者の登場。
ツッコミ無しで進むシュールギャグ。
旅行者&お姉さんのナイスキャラ。
面白い要素は色々とあるんだけど、本筋の物語があと一歩弱かったかなぁ、ってのが正直な感想です。
この一連の話は結局なんだったんだろう、とモヤモヤしたシコリがずっと残りました。
シビアな物語を、個性的な演出やシリアスな笑いでとぼけた感触にした、って印象。
小技は本当に面白い。
けどトータルでみると、同じネタのしつこさや淡々としすぎてるストーリーテリングがもったいないなぁ、と。
うーむ、好きだけどめっちゃ好きにはならない惜しい作品でした。
画面に広がるアイスランドの大地は”花や緑だ、キレイ~”って絵はありません。
むしろ寒々として自然の厳しさを感じました。
しかし圧倒的なスケールの大きさがある。
”大自然”で連想する絵の日本とアイスランドの違いを見た気がします。
ヨギーの言葉に唯一の救い
49歳176センチの女丈夫の主人公ハットラの部屋には、マハトマ・ガンディーの写真が飾られている。もうひとりは南アフリカのマンデラ大統領だろうか。
マハトマ・ガンディーは日本では無抵抗主義と呼ばれる非暴力不服従を唱えてインドの独立運動を率いた。昨年度のアカデミー作品賞の「グリーンブック」の黒人ピアニストが「暴力は敗北だ」と諭していたのを思い出す。ピアニストは絶対に暴力を振るわず小さな違法行為も許さない、遵法精神に溢れた紳士だったが、本作品のハットラは少し考え方が異なる。
ガンディーを尊敬し、ヨガも実践している割には破壊行為に精を出す。ハットラの自己正当化は、アルミニウム工場を標的にしている限り、一般の人々には迷惑をかけていないという理屈である。しかし彼女の行為がテロであることは間違いない。
他者の身体や財産に害を与える行為は共同体の崩壊に繋がるから、すべての共同体で罰則の対象として禁じられている。しかし共同体の権力者には、破壊行為を行なっても罰則が適用されることはない。県民投票で反対多数となっても平気で辺野古の埋め立てを続ける日本政府などがその典型だ。
ハットラには権力と癒着した大企業の行為が我慢ならない。そして人間に対する諦観がないから、怒りに身をまかせた行動に出てしまう。人がテロ行為に走る理由は、生に執着し、帰属意識を持ち、自分なりの世界観による被害者意識を持つからである。被害者意識を除けば、政治家や実業家と同じで、ある意味で建設的だ。人間なんてこんなもの、世界は腐りきっていて手の施しようがないと思っている人間は、テロ行為も無駄であると知っている。
世界を建設し、一方で世界を破壊するのは、どちらも欲望に忠実で自分の権利ばかりを主張する人間たちだ。自分勝手な価値観を他人に強制し、暴力を使って服従させようとする点では、テロリストも圧政者も変わらない。優しさは世界の片隅に追いやられようとしている。聖書には「汝の敵を愛し、迫害する者のために祈れ」と書かれている。寛容と優しさには、暴力行為よりもはるかに大きな覚悟を必要とするのだ。
アイスランドの厳しい自然を美しいと呼ぶのは簡単だが、安全で衛生的で快適な都市の暮らしは捨てがたいし、町並みを見て美しいと言う人もいる。自然を守ることが正しいとされるなら、自然を切り開いて建設された都市はすべて正しくないはずではないか。しかし人は自然も美しいと言い、町並みも美しいと言う。自然は観光資源になるから美しいと言い、都市は便利で住みやすいから美しいと言うのだとすれば、人間のご都合主義以外のなにものでもないだろう。そしてそういうご都合主義は世界中に蔓延している。星空も夜景も両方とも美しいと思うのは、歴史的な刷り込みかもしれないのだ。夜景のどこが美しいのかを考えたとき、明快に説明できる人はいるのだろうか。すべての価値観は絶対ではなく、相対的なのだ。
本作品は、ヨーロッパのヒステリックな現状を直接的かつ具体的な映像で伝えてくれる。環境破壊は問題だが、人間に都会の快適さを捨て去る覚悟があるのか。その快適な生活を維持するための経済活動が環境を破壊する。そして人々は環境ではなく自分の暮らしを守ることを最優先する。なんとも八方塞がりで気が滅入る作品である。唯一の救いはヨギーの最後の言葉にあると思うのだが、それは鑑賞後に各位でご判断されたい。
映画製作の手法としては、音楽が直接映像に入り込んでいるやり方は初めて観た。斬新で、面白い。登場人物が微妙にそれを意識しているところも愉快である。
ゴルゴ
音楽を奏でる映像を
緊迫する場面に入れ込む
シュールな感じと
環境を守るという意思表示のために
インフラ破壊を続ける主人公。
赤外線探知する追手からの
逃走シーンは、
かなり本格的で、
デューク東郷のよう。
シーンの切り口や
音楽の使い方は
かなり独特で面白く、
映像は美しいです。
話の流れや中身が単調に
感じ
あまり、
合いませんでした。
少し退屈でした。
面白い切り口ですね
全てがカッコいい
なぜ、彼女はたちあがるのか
これはなかなか面白い映画だった!
原題は「Woman at war(戦う女)」
アイスランドの田舎町に暮らす主人公の女性ハットラが戦う話である
では、ハットラは何と戦っているのか
彼女が戦う相手は、地元に進出してきた中国系の工場である
ハットラは、その工場が撤退することを願って、工場につながる送電線を切り続ける
いつか政府に逮捕されるかもしれないという恐怖を感じながらも、国と工場に立ち向かっていく
なぜ、彼女はそこまでして戦い続けるのか
そこには、アイスランドならではの理由がある
アイスランドは、国土の約11%が氷河に覆われている
そのため、温暖化が進んでその氷河が溶けたら、アイスランドの美しい景色は失われ、国土が水で溢れてしまうのだ
彼女が戦う理由はそれだけではない
ハットラに念願の養子縁組が決まり、娘ができることになった
だからこそ、将来、娘が生きる未来を考えて、このまま、環境破壊を続けさせてはいけないと考えたのだ
そして、これは、ハットラとアイスランドだけの問題ではない
日本にだって、黄砂と共にやってくるPM2.5による健康被害が心配されている
しかし、そのことに対して、誰も具体的な策を練ろうとはしない
だから、ハットラが立ち上がったのだ
そして、この物語では、アイスランドと共に、重要な意味を持つ国としてウクライナが登場する
なぜ、ウクライナなのか
ウクライナは、冷戦時代のアメリカとの競争で、急激な工業化を行った結果、チェルノブイリ原発事故が起きた国である
その後、ウクライナはどうなったのかという映像がここで描かれるのだけど、それは、工業化したアイスランドの未来を暗示している
便利になって、町が豊かになっても、人々が暮らせない土地になってしまっては意味がない…
ハットラは、女性だからこそ、美しい景色と、草花や、未来の子供たちの心配をするのだ
この映画を観たジョディ・フォスターは感動し、ハリウッドでの
リメイク権を買ったのだという
アメリカでは、トランプ大統領が「温暖化など起きていない」と言い、工業化を進める宣言をしている
そのアメリカで、ジョディ・フォスターがどう立ち上がり、戦うのか
その企画が進んで、トランプ大統領の任期中に映画化されることを願っている
これは、今、世界中で起きている問題なのだ
いとこもどき
切なくも痛快
過度な工業化や、環境破壊に対するテロという見方もあると思うが、なんかとても痛快だった。
凍土の氷の溶けた隙間、氷河、冷たい川が、ハットラを隠し、冷えた身体を温泉が暖める。
そう、ハットラは自然を味方に、戦いを挑んでいるのだ。
そんな環境破壊に対する問題提起なんだと思う。
アイスランドは、リーマンショックで、ほぼ破綻状態になった後、漁業など従来の産業に加え、観光業を振興し、経済的には奇跡的な回復を成し遂げた国だ。
しかし、リーマンショック後の空白域に、重工業の振興といって、中国資本も入り込んでいたという設定で、作り話かどうかは確認しようはないが、まあ、いかにもありそうな話だなと、別の意味でも怖いなと感じた。
日本も、公害が大問題になって、国内の規制が厳しくなると、発展途上国に工場を移転させて、公害を撒き散らしてたってこともあったので、50歩100歩だが、最後の温暖化の悪影響のシーンを見ると、環境破壊の深刻さを感じざるを得なくなるのは、僕だけではないと思うのです。
揺るぎなき心
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