「上質」パリ、嘘つきな恋 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
上質
洒落た感じの恋愛映画。
パリとフランスの代名詞みたいだ…。
ただ、本作は1クッション設けてある。
意中の相手が車椅子に乗る障害者。
昨今はこの呼称は使わないのかもしれないが、本作のヒロインは少し違う。
自分の境遇を受け入れるってのは、こおいう事なのかと思わせてくれる程、負い目がない。
彼女は社会的にも、自分の障害からも自立しているように見える。この作品の誰よりも、自身で立ち歩いているように思う。
そんな彼女に、いい加減の代名詞の主人公は惹かれてしまう。
上手いなぁと思うのは「一目惚れ」の表現の仕方で…彼女と初めて会った時、彼の目には彼女しか映ってなかったろうと思わせてくれる。
それこそ、彼女の車椅子も目に入らない程に。
物語はフランスの優雅で趣きのある風景と共に進んでいく。
洒落たオープンカフェにワイン。
柔らかなフランス語に、清潔感のあるファッション。勿論、小粋な会話も。
キュンとするシーンには事欠かないし、笑えるシチュエーションもふんだんに用意されてる。
このままお決まりのハッピーエンドがと思ってたら、ピクルスのような刺激も忘れない。
その辺りのネタが、さすがフランス映画と唸るような人間模様を入れてくる。
完全な善人などいないのである。
人は建前で生きてるし、本心は隠されるからこそ本心なのだ。
そのスパイスのおかげで、終始コメディタッチであった本作はギュッと締まる。
フランス映画特有ではないが、顕著だと思うのがキャラ設定の秀逸さだ。
どのようなエピソードも、どのような表情も、その役から離れる事が少ない。
シナリオ的なご都合はあるものの、キャラ的な違和感は目立たない。
それは凄くありがたい。
気軽に観れて、笑えて、少し考えさせられる。とても良質で上品なラブストーリーだった。
楽しかった。