「史料に基づく金銭バラエティ」決算!忠臣蔵 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
史料に基づく金銭バラエティ
昔から「忠臣蔵」はこの時期の定番、人形浄瑠璃や歌舞伎でも人気の演目で映画だけでも明治末期から80本以上が制作されているので若い子には無理としても大概の人はあらすじ位は知っていよう。ただ、人気が高かっただけに信憑性の不確かな様々な逸話、外電が付け加えられている。
原作は東大の歴史学者、山本博文教授が書いた「忠臣蔵の決算書(新潮新書 2012)」、この本は劇中でも登場する大石内蔵助が浅野内匠頭の妻、瑤泉院に報告した浅野家の取り潰しから討ち入りまでの浪士らの収支状況を克明に記録した「預置候金銀請払帳」を基に書かれているからほぼ史実と言えよう。
この手の歴史本の先鞭をつけたのはNHKの歴史番組でMCを務める歴史学者の磯田道史氏が書いた「武士の家計簿 (新潮新書、2003年)」でしょう、映画化もされたので本作もそれに習ったのかも知れませんね。
(ネタバレ)
そういう訳で、元帳をつけていた勘定方の矢頭長助(岡村隆史)が立役者の一人だが映画では大石の身代わりに殺されてしまう(史実では病死)のでポスターは嘘、第一、肝心要の討ち入りさえナレーションで済まされていて唖然としか言えません。歴史書に基づいていることが売りなのに宣伝も方便ではリテラシーに欠けるでしょ、と言っても制作が吉本興業がらみだから言うだけ阿呆と取られかねませんね。映画のテーマが節約だけに討ち入りシーンをそれらしき数ショットで済ませて予算を浮かそうと考えたのでしょうか。
そういう訳で映画はドラマと言うよりテレビの金銭バラエティと思った方が良いかもしれません。
ただ、個人的には忠臣蔵のストーリーはお馴染みなので今更古典を芸人たちでなぞるより視点が変る方が興味深い、特に終盤の討ち入り諸経費の見積もりシーンは奇抜、火消衣装に決まった経緯などは新発見でした。
脱線ですがお腹の大きい竹内結子さんが印象的、三浦春馬さんの後追いではないかとも噂された不審死を思うと本編そっちのけで気が沈みました。