「本当の意味で予算掛かった『忠臣蔵』」決算!忠臣蔵 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
本当の意味で予算掛かった『忠臣蔵』
まさかこのタイミングでレンタル開始とは…。これが劇場公開だったら延期になっていたかもしれない。
メインキャストの一人であるお笑い芸人の問題発言は一旦置いといて、映画の感想を。
『忠臣蔵』。
日本人なら誰もが知っていると言っていい歴史上の真実の物語。
舞台に小説に映画にTVドラマに…星の数。
映画では創成期から題材となり、風物詩やオールスター娯楽大作の定番に。
変化球も作られ、もう一つの日本人にお馴染みの怪談話と融合したり、“その後”が描かれたり、果ては海外でファンタジーや騎士道物語にまで…!
それもこれも魅了される物語だからだろう。
そんな『忠臣蔵』に、また新たな作品が。
今作は変化球も変化球。“懐事情”から。
作品自体は現代風の解釈や説明描写。
要は、ライバル会社との争いに負けた中小企業のその後と思っていい。
浅野内匠頭と吉良上野介の事件は敢えて割愛。
藩主亡き後の赤穂藩はお取り潰しかお家再興か迫られる。
番方は討ち入りを訴えるが、勘定方は猛反対。
何故なら、予算が無い!
討ち入りはお金が掛かる。
割賦金も半分に。討ち入らなけば倍の金が入る。
心揺らぐ。金か、“武士の一分”か。
何にしても、お金が無い!
お家再興の道を探る。
が、幕府重臣たちへの賄賂、その他諸々の資金…お金が見る見る内に消えていく。
結局、お家再興は難しい。
とは言え、討ち入りは気が進まない。あのリーダーシップの鑑、内蔵助が!
金銭事情と家臣たちの討ち入り訴えの板挟み。筆頭家老もつらいよ…。
しかし、次第に理解し合うが、ある時悲劇が起こり、内蔵助は決断する…。
先にも述べたが、我々が知るイメージとは一味違う内蔵助。堤真一が人間臭く好演。
勘定方に問題渦中のお笑い芸人。TVでの過剰なお笑いは抑え、なかなかに真面目な演技。意外や感動的な見せ場も設けられ、いい役回りであった。それだけに…。
そして、“超”が付くほどの豪華キャスト!
人気俳優に人気女優、実力派、個性派、ベテラン、若手注目株、アイドルにお笑い芸人に落語家まで。
これらの面子は是非見てお楽しみを。
それにしても、キャストの面子が『超高速!参勤交代』や同じ中村監督の『殿、利息でござる!』、先日見た『引っ越し大名!』と被り、もはや快作時代劇コメディの鉄板キャストなのだろうか…?
遂に討ち入りを決めた。
が、それはそれで大問題。やっぱりお金が掛かる~!
敵の眼を欺く為の“遊び”代、旅費、衣食住代…。
志を共にした者たちが集うだけで、その分またお金が飛ぶ。
そして何より武具代。武具代ってそんなにお金が掛かるのか…。言われてみればそうだけど、言われるまで気にも留めなかった。
勘定方は赤字で気絶しそうで、内蔵助も頭から煙が…。
討ち入り人数を減らし、決行日を3ヶ月早め(当初予定の主君の命日の3月14日から12月14日に!)、予算をやりくり。
それでもギリギリ!
果たして、討ち入りは決行出来るのか…!?
…と、まあ、史実なんだけどね。
遺された実際の決算書を基にした著書を膨らませて映画化。
お金に振り回される赤穂藩士たちの姿がユーモアたっぷりに。
頭を抱えるが、大義や忠心はある。覚悟を決めた時は熱く、誇り高く。
泡のように消えていくお金、実際に現場で闘う者と裏で支えやりくりする者の対立…それらは昔も今も変わらず、現代にも通じる。
現代的な音楽や金額表示など中村義洋監督の演出は斬新。
数々の『忠臣蔵』映画も予算掛かってるが、これぞ本当の意味で予算掛かった『忠臣蔵』!
…だけど、かなりコメディ寄り過ぎ。王道の『忠臣蔵』を期待すると、肩透かしかも。
それに、一番の大見せ場も“リハーサル”で。
あくまで“討ち入り”ではなく、討ち入りまで金銭事情のお話なのは分かるんだけど…。
これはこれで面白い見せ方ではあるけど、やっぱり自分は王道の『忠臣蔵』が好きかなぁ…。
さて、メインキャストのお笑い芸人。
勘定は出来るのに、発言した後の身の振り方やそれが社会(特に女性)にどう影響を及ばすか、先々の事を見据える事が出来なかったようだ。