「良かった…!」天気の子 ひろさんの映画レビュー(感想・評価)
良かった…!
本作は、前作のデジャブを期待しすぎなければ、とても良い作品だと思います。
前作は予定調和的な帰結が、広い層への感動と共感を呼びました。単純なストーリーを一見複雑に見せかけ、視聴者自身に解決させる。難問を簡単な図解に落とし込み、子供自身に解かせることで自信をつけさせる有名塾講師のような…。新海監督の上手さを感じる作品でした。
今回は、いい意味でワイルドです。監督の持つ価値観、メッセージ性、前作の焼き直しにしないぞ!という気持ちをそのままぶつけてきてくれてるような…生々しい印象を持ちました。作者との対話という意味ではリアリティのある作品だと思います。
前作はひろい層に受け入れられる作品だったので、新作にあたっては、色々な葛藤やプレッシャーがあったかと思いますが、前々作までの悲恋な要素、前作のハッピーエンド的な要素をうまくバランシングさせた結末への持って行き方は、さすがだと思います。
さて、設定についてですが、自身が人柱になることで狂った天候をおさめてきた代々の天気の巫女達。その結果としての現代の東京の姿。かつての東京は、「本郷も、かねやすまでは江戸のうち」といわれたように、もっと小さかった。銀座のすぐ近くまで東京湾がきていて、日本橋には魚河岸があった。そんな江戸の海を埋め立て、そこにいた海の生物達を追いやって繁栄してきた不自然な東京。不自然な繁栄の象徴たる歌舞伎町の街並み。そんな不自然さを維持するために人柱が必要だった。天気の巫女が人柱から解放されたことで、東京の街も狂いから解放され、本来あるべき姿に戻った。
色んな感じ方があるかと思いますが、そう考えると最後のシーンも違った楽しみ方ができるんだと思います。
ところで、巫女のお話、前作の、代々夢を見てきた宮水の人たちのお話を思い出しました。そして、平泉さん演じる刑事さんが須賀さんに、「泣いてる」と声をかけるシーン。宮水のお婆さんが三葉に「夢を見ている」と声をかけるシーンとシンクロしました。きっと、あのとき須賀さんは、奥さんとの叶わぬ夢を見ていたんでしょうね。
新海監督、今回も素敵な作品をありがとうございました。