「素晴らしい映画でした(考察多めのレビューです)」天気の子 みすずさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい映画でした(考察多めのレビューです)
映画の後、パンフレットも拝見しました。
一番印象的だったのは、3年前の君の名は。の主人公たちはパンケーキを食べて感動している。
しかし、今回の作品では感動して食べているのは、すべてファストフードでした。
前作3年前の上映から日本が確実に、貧民国として進んでいく様を表していると書かれていた所。
異常気象に子供の貧困、そんな中を助けてくれるはずの大人に銃を構えてでも大切な物を守るために必死で生きていかなければ、いけない子供たちを描いた映画の様に感じます。
これは、私の考察ですが、帆高は家は愛情不足の家庭。
最初のシーンで、彼のばんそこだらけの顔は厳しい家で、自分の意見を言ったら殴られたのかな、、、なんて思わせます。
また警察に捜索願は出ているのに、彼を心配する親からのメールやLINEの描写は無いのです。
育ちは中流家庭かな。陽菜の家に訪問する時、彼はお土産持って行っているところから感じます。
そして陽菜の家は、元々貧困だった家が母子家庭のお家がさらにお母さんの死によって更に貧困になってしまった、今確実に社会的問題になっている貧困家庭。
1年前にお母さんが亡くなったにしては、部屋に生活感が有るので亡くなる前から、あのアパートに住んでいるのでしょう。
また彼女が作る帆高への料理は、元々貧しい中お母さんが彼女に作ってくれていた物なのではないでしょうか。ハサミでネギを散らすシーンは、お母さんの真似なのかなと感じました。
彼らが逃げる時、ラブホテルで沢山のジャンクフードでパーティーをしている様は、彼が手に出来想像できる、衣食住、最高の贅沢シーンの様に感じました。
明るいシーンなのに、ものすごく切なかったです。
食べる物や説明の無い描写で、ここまで表現が成されている(感じる事ができる)のはすごいです。
そして主人公が銃を構えるシーンは、大切な人を守るためでした。
しかも、全部大人に向けてです。
帆高の両親を、帆高が信じる事が出来ていたら、大切な子の為に自分が我慢して
助けてくれと三人で島に帰ったでしょうし、警察から無理やり逃げるなんてしなかったでしょう。
それができない、大人を信じれない悲しい環境に彼は居る。切ないです。
陽菜が大人のフリをするのは、大人にならなければならない現実が彼女には有るから。
病気のお母さんを看病や、弟の面倒で彼女は大人にならないといけなかった事情があります。
俗に言うアダルトチルドレンです。
誰かに必要とされていたい、頼りにされていたい、そうじゃ無いともう自分を保てない位に繊細な心は、消える事を知っていても彼女を人の喜びの為の自己犠牲へと向かわせています。
劇中子供達の純粋な願いは、東京を水に沈めますが、
今の大人の生活は、これからの子供の犠牲の上になっている
主人公達はそれに少し抗っただけ、では無いでしょうか?
大人に絞りつくされた世界を、子供達は生きる。
そんな中で少しでも幸せになる為の反抗の様にも感じます。
誰かの犠牲の上に有る、人の幸せなんて脆い
他の作品の話になりますが、手塚治虫原作のどろろなんかでも言ってたな、なんて思いました。
そんな今の日本は脆い、未来の彼らに平穏な日々を。
そんな警告の様にも捉えられました。
しかし風刺的になりすぎないぎりぎりの演出見事。
そしてRADWIMPSの挿入歌
とても素敵でした。
君の名はの際は、劇中の世界観を高めるといった印象でしたが、
本作では、劇中の作者が描きたくは無いが伝えたい事を、歌で想像させる
そういった印象を感じました。
二作目で、監督との意思の疎通が円滑になったから、といった理由も、もしかしたら有るかもしれませんが、
本作は、あくまで説明的にならない様に監督が作った映画で、それを目では見えない歌で表現したのかなと思いました。
映画を見た後、パンフレットに載っている歌詞を見た時、物語の解説を見た様な気持ちになりました。
登場人物に対しての環境や性格に説明があまりない点、見る人、聞く人が自分で考えて欲しい
そんな、作意も感じましたし、自分に近い登場人を自分に置き換えて見れる、そんな映画の様に感じました。
奥行き感の有る、美しい映像にやさしい歌
見る人に、考える余地を残してくれる日本アニメーション映画らしい作品だと思います。
個人的には、名作だと人に進めたい映画でした。