「君の名はの流れを汲んだ新海作品」天気の子 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
君の名はの流れを汲んだ新海作品
新海作品の主人公は映画序盤では、なよなよしていたりたどたどしさが目立ちます。中盤~終盤にかけて世界の何かを変えてしまうことでも完遂してしまう行動力を発揮して現実離れした事の連続で助けてしまうんですよね。で、結局助け出したヒロインとは長続きせず結局別れてしまったりと世界を変えたかと思えばいきなり現実感があるラストが来る。
『Rain』『君の名は』以前はこのパターンがありラストの影響で私は大人目線の映画 or 小説だなと感じておりました。
また、映画としてヒロインと世界の美しさを感じる場面に時間を割く一方で掘り下げが少なく、主人公や周囲のキャラクターの行動に疑問を抱く場面もあります。
『天気の子』では君の名はの流れを汲み序盤~中盤にかけてRADWIMPSの音楽に乗せて家出少年の東京での生活やヒロインとの時間を軽快に演出しています。『雨』が一つのテーマであるため基本的には雨が降っていますが、ヒロインの能力である『ハレ女』による陰と陽の切り替えが気分を高揚させてくれます
時折いやな予感を覚えさせるシーンを出されて「新海ぶれないでくれよ」とひやひやさせられたのは私だけでしょうか・・。
中盤からは新海節の炸裂により世界観の謎の力により、ヒロインはピーチのように攫われ?、主人公は愛に芽生え謎の行動力によりヒロインを救うため行動します。
『君の名は。』では、ヒロインと世界を救い両立している点から手放しで応援できる形に対して『天気の子』ではヒロインを助けるときの時のクリボーやクッパが警察であり、傍から見ると明らかに主人公やその周囲に非がある点でしょうか。主人公、ヒロインの行動原理に疑問符が出てくることがあります。さらに、ヒロインと引き換えに東京が雨で水没してしまうため世界よりヒロインを取った形になります。展開として以前の新海節が出てくるため賛否両論がある形です。
終盤に主人公が世界を犠牲にしたことに対して悩む場面があります。一緒に見に行った友人は雨ぐらいで悩むな。との感想でしたが作中では語られませんが、東京の交通網が麻痺することで病院などで死者が出るといったことが連日ニュースになったことは想像に難くありません。その後の状況や主人公の家出の原因やヒロインの生活などかなり重そうな話は結局は語られないため情報不足と感じます。
一方で私は回想はテンポを欠いてしまうためあまり好きではありません。映画としてみた際に世界観に没頭できないなってしまいます。そういう情報は原作小説などで新しい発見として楽しみたいのも理由の一つですが・・。
いろいろ書いてしまいましたが、ヒロインとの逃避行や非日常感が非常によく描写されており、何度か見たくなるシーンが多いですね。グランドエスケープが流れた瞬間の透明感が個人的に好きなシーンでした。大人目線で見ると上記の部分が確実に目についてしまうため、新海作品はある程度割り切って世界に入りこまないといけない作品だと思います。
君の名はの後作品であり、重圧があったと思いますがよくできた映画だと思います。映像はきれいの一言です。ぜひ劇場で雨の音に浸りながら世界に没頭してみてください。