「共に苦しみたかったのに」オッズ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
共に苦しみたかったのに
プレイヤーの女とゲームマスターの男の、ひたすらな掛け合いと掛け合い、時折挟まれる拷問チキンレースを眺める107分。
拷問シーンがアクセントになってギリギリ飽きずに観られたけど、突き抜けた快感は皆無だった。
絶対に帰らない、絶対に勝つ、と強気に宣言しておきながら、いざゲームの道具を目の前にすると急に駄々こね出すプレイヤーがなんだか哀れで可笑しくて居た堪れない。
気持ちがブレるのはよくわかるけれども。
すぐヒヨる癖にわりと我慢強く、待ち時間の会話は常に上から目線でなんだか応援のしがいがなかった。
心理戦が如く繰り広げられるプレイヤーとマスターの言葉の応酬、その駆け引きの必要性が全く感じられない。
目の前の人間は対戦相手ではないんだから。
やたらイケメンなマスターに愛だ結婚だと甘く囁かれたと思ったら急にサイコな態度に変わったりするけど、普通に予想の範囲内。
そりゃそうでしょ。なんだその茶番は。
最後の方になるとゲームの本質や他のプレイヤーの存在、目の前の男に対しての様々な疑念が襲って来るけど、その辺は結構どうでもいい。
そこを利用して想像以上のラストが待ち受けていれば万々歳だったのに、びっくりするほどストレートな展開しか待っていなくて残念だった。
まあ終わり方は嫌いじゃないけど。
本当にまどろっこしい茶番が多い。
せめてそれを活かして欲しかった。
だんだんレベルが上がるゲーム内容はなかなかドキドキした。足入れるの最悪。
痛みは想像出来るけど、直接描写をもう少し頂戴。
最初はゲーム見学の悪趣味ギャンブラーになったつもりで観ていたけどそれだと退屈だったので、ならば一緒に苦しもうと息を止めたり指に爪立ててギリギリやったりしていたのに。
肝心の描写のシーンが弱すぎて、ただただ映画鑑賞中に自分を痛めつけているマゾ人間になってしまった。勘弁して。
なんとも中途半端かつ迫力のないワンシチュエーションスリラーだった。
ただその設定はありきたりながら面白く、狭い密室から深く暗い世界への繋がりを感じさせるつくりは面白かった。
何だかんだこういうデスゲーム的なテーマは好き。