「連番」フォー・ハンズ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
連番
死者を悼むのは罪悪感を和らげるための自己満足。
精神的な追い詰めや物理的な痛みや恐怖とトラウマも折り込み、ホラー要素やサスペンス要素もバランス良く配合されたサイコスリラー。とても面白かった。
妹を守ることに異常な執着を見せる姉ジェシカ。
生前の暴走っぷりが既に怖い。
隈たっぷりで目が落ち窪んでてノイローゼ感が半端なくて普通に恐怖である。
守るためだと言いつつ、事件を消化して母と同じピアノの道を進みたいソフィーの邪魔にしかなっていない。
これまでもソフィーの友人関係や恋路に一々首突っ込んでいたんじゃないか、なんて想像も容易い。
死してなお過干渉と暴走が続き、身体を乗っ取られる気持ち悪さ。
自分の意識とは関係なく人格が入れ替わり、記憶の無い間にとんでもない行動を繰り返される恐怖。
その行動、守るどころか危険に晒していることになるのに。
しかしジェシカの暴力性と攻撃力の強さは少し笑える。格闘技かなんか習ってたのか?
ただ20年前の犯人達を追う目的にハンドルを振り切り、尋常じゃない熱量でガンガンに行動する姿はいつしかクールにも見える。いや怖いけど。
録音メッセージを利用したやり取りや崖っぷちの抵抗方法にグッときた。もう必死。
それぞれがそれぞれの道を塞ごうとする思索が面白い。
たった一言で見えてくる真実。
若干の既視感はありつつ、完全にしてやられた。後になって思い返す小さな伏線。
なんて切ない。あまりにも苦しくてあまりにも悲しくて、すごく良い結末だった。
最後に吹き込んだ小声のセリフとピアノの連番で涙腺崩壊。
大きすぎる荷と愛が巻き起こした悲劇と奇跡と前進の話だった。
20代半ばの歳、これからの人生に幸あれ。
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