「本気で取り組んだ結果こうなった」HELLO WORLD KNG_UDNKさんの映画レビュー(感想・評価)
本気で取り組んだ結果こうなった
いかにして夢オチを正当化させる話を書けるか、というテーマに本気で取り組んだらこうなりました、というような映画。ただ、それならそれでもうちょっと伏線があっても良かったのではないかと思う。夢オチの伏線ではなく、実は逆だったんです、というコトへの伏線がほしかった。ラストシーンが月面だったのは、映画としては意味がなくて唐突感がある。ひょっとしたら原作では上記のような疑問点も解消されるような記述がされているのかもしれない(野﨑まどだからないかな)。
映画の前半で、マトリックスを彷彿とさせるようなシーンや言及がされているのは、今観ているシーンは必ずしも現実とは限らない(つまり夢オチ)、という伏線なのかもしれないけど、そうだとしても、だから逆だったのか、と後から気がつくような伏線は別にあるべきだろう。
また、主人公(オチからすると主人公で良いのか怪しいが)に「SFが好き」としゃべらせたり、イーガンに言及させたりする割には、主人公のいる世界の成り立ちの説明はともかくとして、カラスの力については、もうちょっと科学的な説明があっても良かったのではないかと思う。想像力が重要、という意味では、気合いパーツにそれらしい説明を加えたと言えないことはないけれど。
ただ、これまで上げてきたような、オチへの伏線や科学的な記述がちょっと足りない点を除けば、ストーリー展開としては、とてもわかりやすくて良い映画だったと思う。映画ならではというか、アニメ映画ならではの映像の美しさも良かった。
おそらくほぼすべてのキャラクターが3Dで描かれていたのだと思うし、それ故の仕草のぎこちなさはやや残ってはいるものの、2次元の線画を中心とした日本のアニメーションの良さをしっかり残した絵作りも良かったと思う。
そういえば、主人公が自分がいる世界から飛び出して飛ばされているときに、1シーンだけ「カド」が出ているシーンがあったなあ。こういうのを見つける楽しみもあるかもしれない。