劇場公開日 2019年9月6日

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「なんで自分とそっくりな連中が襲ってくる!?という疑問に回答する設定はあるんだけど、理屈よりも他者あるいは自分自身に対してすらも抱く異物感を作劇に取り入れる巧みさは前作以上に洗練されている感のある一作」アス yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 なんで自分とそっくりな連中が襲ってくる!?という疑問に回答する設定はあるんだけど、理屈よりも他者あるいは自分自身に対してすらも抱く異物感を作劇に取り入れる巧みさは前作以上に洗練されている感のある一作

2025年5月18日
PCから投稿

ある日自分とそっくりな連中がやってきて、わが家を乗っ取ろうとする…という設定は本作以外にも、SFやホラーの分野でたびたび登場しているため(ジョーダン・ピール監督の前作『ゲット・アウト』[2017]もそんな要素があるし、『ボディ・スナッチャー』[1956]、あるいは『ゼイリブ』[1988]などの今や古典となった感のある名作も)、なんとなくそんな先行作品をなぞった作品なんだろうなー、と思い込んでいました。

そしたら、本作の「敵」は最初っから戦闘態勢。こっそり入れ替わる気などまるでなさそうで、いきなりぐいぐい迫ってきて、あっという間に血なまぐさい脱出劇につながっていきます。

彼らは何者で、どこからやってきたのか。そして目的は何なのか、といった、ことの真相はやがて明らかになっていくのですが、種明かしをしてしまうとあーなるほどねー、と納得しはするものの、ちょっと醒めてしまうあたり、ちょっとM・ナイト・シャマラン監督に通じるところもあるかも。

ただ本作は設定の面白さというよりも、自分の中に他者が入り込んでくるという根源的な恐怖を扱っているため、種明かしの内容自体は本作の価値をそれほど左右しない、と感じました。

ピール監督は上記以外にも、実に様々な先行作品要素を取り入れているので、参考資料としていくつか参照作品を挙げたい!ところなんだけど、そのランナップ自体が内容に触れてしまうため、何も言えないのが辛いところ。さすがに上記で触れた作品程度はいいと思うけど。

ピール監督が一連の作品の主題としているといっても良い、肌の色や出自による社会的偏見とそれに基づいた社会構造の歪さへの批判について、本作は前作『ゲット・アウト』や次作『ノープ』(2022)と比較すると一見してそこまで直接的に言及していないように見えます。が、実際のところ作中のさりげない描写や言動を通じて、それらを巧みにあぶりだしているあたりに、監督の作劇の洗練さを感じました!

yui
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