ガルヴェストンのレビュー・感想・評価
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仏の才女メラニー・ロランが米犯罪映画の定型から抽出した妙味
第二次大戦中に製作された米犯罪映画を「フィルム・ノワール」とカテゴライズしたのは仏映画業界の人だった。フランス人は米映画への独特な批評眼を持つのか――メラニー・ロランが監督として米脚本家・作家ニック・ピゾラットの原作を映画化した本作を観て、そんなことを思う。
非情な裏社会、乾いた暴力、絶望的な逃避行、破滅の予感…。アメリカンニューシネマを経た米犯罪映画の定型をなぞる話だが、人物描写、ビーチの場面での印象的な映像、余韻を残すラストなど、フランス人でしかも女性の監督であるロランが、敢えて起用した製作者たちの期待に応え特別な味を引き出した。ピゾラットの脚本がロランによる大幅な改稿のため偽名の名義になったが、彼女が自分を貫く姿勢も格好良い。
エル・ファニングとベン・フォスターもかつてないほど役作りに集中できたのでは。2人の演技をいつまでも見ていたいと思わせる…それが叶わないとわかっていても。
女優でもあるロラン監督が二人の俳優の旨味を誠心誠意、引き出した一作
驚くほどシンプルだし、捻りのない映画だ。最後に訪れる運命もある程度は予測がつく。観る人によっては凡作として切り捨てる可能性も大だ。だが、このありふれた設定や土壌が、あらゆる無駄なものをそぎ落とし、二人の俳優としての魅力をかつてないほど香り立たせることに繋がった。
ベン・フォスターとエル・ファニング。二人とも普段の出演作ではあまり喋らず、空気感に多くを託するタイプにも思えるが、さすが女優メラニー・ロランがメガホンを取っているだけあり、彼らの俳優としての旨味を、同業者の彼女が彼女にしかなしえないやり方で巧みに焙煎し、抽出している。
また、ロランにこのようなハードボイルドや長回しのアクションが撮れるとは恐れ入った。全てが成功しているわけではないし、本作の製作規模もそれほど大きいわけではないが、しかしその中で彼女なりの精一杯の「答え」が導き出されている。しっとりとしたラストの余韻もたまらない。
【裏社会】哀しいお話( ノД`)
<<あらすじ>>
原作はニック・ピゾラットのハードボイルド小説『逃亡のガルヴェストン』。
死期を悟った殺し屋と娼婦に身を落とした若い家出娘が繰り広げる逃避行劇。
■伏線あり
冒頭の窓から見える嵐とか、最初にちょこっと出演してる何も思わなかった女性が最後に出てきます。正直この女性誰??って思うくらい忘れてたよww
■お医者さんの話は最後まで聞きましょう
勝手に肺癌と思い込んで現実逃避する主人公ロイ。
そのせいで人生投げやりモードに入ってた気がしますw
■ロッキーが不憫でならない
19歳の少女ロッキー。彼女の人生が壮絶すぎました。
義父に暴行されてできた子がティファニーちゃんだとカミングアウトします。
そういう事で撃ったのか・・と納得。
■泣いた・・・
個人的には追手に捕まる前の最後のデートが、
2人とも本当に楽しそうで泣けました。
なんというかそこだけ希望が見えたんですよね。
人生やり直せるという会話も過去にあったからね。
高卒認定受けて、希望の未来が広がっていると思ったのよね。
だからラストは救われないし、絶望しかなかった。残念です。
■結局ボスには絶対服従なのね
結局、刑務所行きになったロイに面会にきた元ボスの顧問弁護士。
告発したらティファニーちゃんを守ってくれてるモーテルの人たちにも危害が加える恐れがあるという事で黙って20年間刑務所で過ごすことになりました。
このボスってそんなに絶大な力持ってるのかね??私だったら警察の偉い人に話して守るべき人を守ってもらう約束をして告発するけどね。
■映画【レオン】を彷彿させる
こういうプラトニックな愛がLEONを彷彿させますね。
■ラストは・・
ティファニーちゃんが幸せだと確信したので、安心しての行動かな?
そのラストしかなかったのかな?・・と腑に落ちないとこはあるけど
最後はティファニーちゃんという希望で締めくくってくれて、ありがとう。
派手なアクションもないし、暗い内容のストーリーだし
ラブロマンスもないし、絶望的な内容の映画ですけど
個人的には惹かれましたね。
悪くないと思います。
薄汚れた世界の男と美しいヒロインの儚い逃避行
クライマックスを観た後に、エル・ファニングの真っ赤なドレスと美しい海が儚く切ない。
ストーリーはありがちだけど、物語が進むにつれてワンカットワンカットが印象的で記憶に残る映画。
このクソみたいな人生
1988年、ニューオリンズ。裏社会で生きてきたロイは、診療所で白いモヤのかかった肺のレントゲン写真を見せられる。咳ばかりしてるし、血痰もある。完全に肺ガンだと思い込んだロイは自暴自棄になり、いつもの仕事を頼まれるが、そこで何者かに襲われ、反撃して相手を殺してしまう。そして拘束された少女ロッキーと出会う。
テキサス州オレンジ郡から来たというロッキーは金は一銭も持たない。とりあえず逃げることを選択した二人だったが、彼女は実家に立ち寄って衣服を持ってくると言う。そこで銃声。ロッキーは3歳の少女を一緒に連れてきて、仕方なく懐かしのガルヴェストンのモーテルまでやって来る。
ロイもロッキーも人を殺して逃亡しているという悪の共通項によって縛られている。しかしロッキーはまだ19歳。身を売って生計を立てると言うが、「人生は何度もやり直せる」と諭す40歳のロイ。3歳のティファニーは妹だと言ってるが、ロイにとってはどうでもいいことだ。ただ、二人に海を見せてやりたい。それだけの関係・・・
途中、腐った野郎に強盗に誘われるが、最終的には殺してしまったロイ。クソみたいな人生だったけど、ロッキーだけには幸せになってもらいたいと願い、雇い主を脅迫しようと思い立ったが・・・という展開だ。
厭世的なロイと、彼についていこうとする少女。そして幼い子を大切にするモーテルの優しい住人たち。彼は人生に何かを残せるのか?と、最悪の展開を見せながら、その後の人生がまた渋い。
生かされてしまった20年。このまま贖罪だけで終わるのかと思いきや、あの時の3歳のティファニーが大人になって彼のもとを訪ねてくる。もう涙なしでは見られない真実。そういえば、アメリカ南部であってもかなり気候の違う都市が描かれ、彼らの心をそのまま表しているかのようだった。残りの人生を価値あるものにできるのか・・・自分に置き換えて見てしまい、どこかで善行を積まねばと、ちょっとだけ希望を与えてくれる作品でした。
逃避行のロードムービーを、何とも心地良く仕上げている。
良い意味でシンプル、大きな伏線や起承転結はほぼ無い。''追われる''というより''逃げる''事にフォーカスを当てた視点が新鮮で、追手はほとんど登場しない。
その進展のみで''緩急''を表現しており、特筆すべきは逃亡シーンが''緩''、日常シーンが''急''というのが面白い。
ありがちな銃撃戦やカーチェイス、、、はほとんど無い。身を隠しつつ新しい生活を模索し、日常という小さな幸せを渇望する。その人間関係とギクシャクした愛情、何気ない日常の脚本が絶妙で、単純な内容を心地良いサスペンスにして90分に纏めている。
『人生を悲観してしまう』とはこういう事なのだろうと思いながら、主人公ロイ役ベン・フォスターに自分を重ねてしまった。
そして酷い境遇のヒロイン、ロッキーに出逢うのだが、このエル・ファニングの物凄いナチュラルな迫真の演技に魅了された。
明らかにバッドエンドを想像してしまうストーリー展開にも拘らず、ラストのロイ、ロッキーの描写に心を癒された。いや、もしかしたら心を救われたのかも知れない。
最後の衝撃の告白を是非。
HELL IS REAL
劇中に出てきたこの言葉を、どう訳すか。
僕ははじめ「地獄は本当にある」だと思ってたけど、たぶん間違いだった。
きっと正しくは、「現実こそが地獄である」だ。
切なすぎる展開に、ほんの少し差すか差さないかの光明。
嵐はきっとロイの心中を象徴しているのだろうし、
砂浜でほほ笑むエル・ファニングの神々しいこと。
クソみたいな現実だとしても何かしらの意義や救いはあるし
そもそも生きて輝いた時間そのものが美しい。
後味が悪いと言われそうな本作だけど、含んでいるメッセージはポジティブだと思う。
地味ですが・・・とても丁寧に作られた作品だと思います。
病気に冒された殺し屋が、囚われの少女と逃避行を繰り広げる物語。
ありがちな設定で、余り興味を惹かれませんでしが・・・結果として、鑑賞して良かったと思える作品でした。
少女の描き方が秀逸です。
不幸な生い立ちの少女。突然現れた庇護者に頼り、見捨てられることに恐怖します。彼女の悲鳴にも似た叫びと、過呼吸のような息遣いが耳に残り、胸が押しつぶされそうになります。
ラストへの展開は賛否両論だと思いますが、少女の不幸をリアルに描いたこの映画なら「あり」なんでしょうね。その展開だから導き出せた薄日差すような終わり方は、私好みではありました。
極めて地味ですし鑑賞者を選ぶ作品だと思いますので、最高評価は控えましたが、それでも評点4は過大ではないと思える、そんな作品です。
Hell is real
Hell is real
古今東西、
クライムストーリーと呼ばれる作品は、
今ではHell is realを強調するために、
血みどろのチキンレースを繰り広げています。
そんな中、血もハッタリも、銃の横撃ちも要らないわよと言わんばかりの、
メラニー・ロランの銃よく業を制す柔さばきに蜂の巣にされてしまいました。
期待以上のいい映画だった
とてもいい映画。裏社会の男と少女の売春婦のロード映画。静寂な映像描写と時折の暴力描写がとても良かった。M・ロラン監督が相当うまい。J・フォスターとE・ファーニングの役作りが非常にリアルで人物描写が細かく非常に丁寧だ。ラストのオチでのL・ラインハートと明かされる感傷的な会話も非常に余韻が大きく良かった。
現実から逃避行して、人間味を取り戻す
内容盛り沢山で書きたい事は山ほどありますが
このお話しは自分勝手で、仕事も人を殺したりするようなダメな男が人間味と愛を取り戻すお話しだと思います。
ロイがロッキーを探しに車で町をグルグルさまようシーンや、ティファニーがロイのお尻をペシペシするシーンなど、そこには組織に属してた自分勝手な男というより、家族思いのお父さんそのものです。
ロッキーもロイを頼りきっていて、ロイがいなくなると絶望を感じてしまって以前の生活に逆戻り。
でもロイが戻ってくると、自分を取り戻します。
現実は地獄のようですが、ロイ、ロッキー、ティファニーの3人でいるときには人間味を愛を取り戻す。
映像もとても綺麗ですし、ストーリーの展開も素晴らしく、そしてベンフォスターとエルファニングの演技が素晴らしいです。
良作です。
ぜひ見て欲しい作品です。
Fire on the Mountain ( The Marshall Tucker Band )
ガルベストンはテキサス州のメキシコ湾に面する港町。
マーシャルタッカーバンドはサザンロックバンド。
南部では最も人気のあるバンドかもしれない。
サザンロックはレイナード・スキナードやオールマンブラザースバンドのほうが日本では有名だが。
マーシャルタッカーバンドはサザンロックのバンドの中でも、カントリー、ブルーグラス色の強いバンドで、フルート、バイオリンが入る。ロックでも哀愁がただよう曲が多い(日本語のウキペディアには残念ながら載ってなかった)。
薄幸のふたりが楽しそうにする唯一といってよい場面がある。
ボスに証拠書類との交換に7万5千ドルを要求し、ロイはそれをロッキーにやるつもりで、
「高校、大学に行って人生をやり直せ」と陽の傾きかけた桟橋で言う。
ロイはティファニー(娘)をMotelのおばさんに預けて、二人だけで夕食にいこうとロッキーを誘う。
ショットバーの生バンドの演奏に合わせて、ロッキーが踊りだす。
背中がガバッと開いた真っ赤なドレス。特別な夜なのだ。
白い肌によく似合う。
ロイを誘って、二人が踊る。
そのとき流れるのが マーシャルタッカーバンドのファイヤー・オン・ザ・マウンテンだ。
結構長いシーンで、曲も長く聴ける。
じつにいいシーン。
そのあと、店から駐車場に出てくるとボスの手下に捕まって、ボコられて、ボスのいるニューオーリンズに連れ戻される。
まさに最後の晩餐。
この映画、非常に気に入ったので、その後、DVD買った。
DVDではボス役の俳優とその女役とからむ冒頭のシーンや銃撃シーンやナイフを使って、ベン・フォスターが刺客を倒すカッコいいシーンがおおかたカットされていた。大事な導入場面だと思う。
とくにベン・フォスターにとっては。
もしかして、刺客役の俳優がその後、クスリで捕まったとか、婦女暴行罪で捕まったとかか?
なんでだ❗
がっかりだ❗
映画館は☆5つ。
DVDは☆2つだ❗
そうゆう事って、よくあるのか?知ってるかたがいたらおしえてほしい。
追記:監督はフランス人女優のメラニー・ロランときいて、感心した。才女だなぁ。
いくつになっても、人生はやり直せる?
「男は死に場所を求め、女は生きる希望に縋った」「この娘を守って死のうと思った。この男を信じて生きると決めた」のコピーに、まんまと誘導されたせいで、ありきたりではないラストの展開が重くのしかかってきた。ふつう、この手の逃亡劇の場合の王道ってあるじゃない?そうじゃないの?って意外性。ああ監督(もしくは作者)は、この人(役者)をこうしちゃうんだ、で、こういう後日談を用意しちゃうんだ、って思う新鮮な感情。女性監督ならではの視点もいい。演出もカメラアングルも。同じ筋書きでも男性監督ならばドンパチとカーアクションは欠かすまい。
逃避行のロードムービーかと思いきや、避暑地ガルヴェストンで身を隠すのだが、ロイにとってそこが特別な場所なのも、センチメンタルでいいなあ。ロッキーと出会って、何か忘れていたものが目覚めた感がある。本人は気付かずとも。
それまで殺したり壊したりする生き方をしてきたロイが守るものを見つけ、それまで騙され惨めな生き方をしてきたロッキーが信じられる人に巡りあえ、二人ともその短い時間は幸せを感じれたことだろう。だけど、二人がその境遇でなかったら、味わえない、味わう必要もない幸せなのだと思うと、それはまた気持ちは複雑になってくる。
衝撃の真実に仰天
ロイとロッキーと妹、三人の関係性の描き方が絶妙で素晴らしい。そして、ラストで明かされる衝撃の真実には仰天。美し過ぎる女優エル・ファニングの演技力と存在感はさすがの一言で魅了された。貴重なビキニ姿を含めてどんな衣装を装っても芸術的で素晴らしい女優です。
2019-179
誰かの為に何かをする。それは果たして良いことなのか…
死を覚悟すれば、怖いモノなどなくなる。
死を恐れるから意に反したこともできる。
しかし、それが誰かの為だとなるといささか様子は変わってしまうようだ。
安易な方法で大金を手にしてきた人生は、いつだって死と引き換えられていてどこか緊張感が生きてる実感となってしまっていたのだろう。
半端に勇気などない方が良いに決まっているがないよりはましだろう。
どんな人間だって生きた証が欲しい。
しかし、哀しみは限りなく深い。
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