「木を見る人。森を見る人。」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD taumamaさんの映画レビュー(感想・評価)
木を見る人。森を見る人。
ドラマ終了後、妄想祭りになっていましたからね。絵柄的に地味でも2人の距離感と実際の結婚までの段取りをニマニマ、くすっとずーっと見ていたいという方は否定的なんでしょうね。私も数回観ましたが、ドラマを見ていなさそうなおじい様、おばあ様方が屈託なく笑っている姿を見て、今回のこの映画のビジョンの一つがこれかと思っています。そこに民への要望もできる限り織り込んでいると思いますが、欲しがり民(親しみを込めて♡)には消化しきれなかったのでしょうね。制作陣も悩まれたと思います。
個人的には演出的に思うところもありますが、制作陣の伝えたい大きなテーマは理解できます。見ている方個々が求めるテーマはそれぞれあるでしょうが、少なくとも制作陣の決めたテーマはブレていなく、確かにドラマの内容を踏襲していると思います(そして私はそれに納得しています)。
また、よく言われている「2人のキャラの変化」は決して唐突ではないと、かなりの大人となってしまった私(つまり年増)は、絶妙なところをついてきたなぁ、色々考えたんだなぁと変に関心しています。
思い返してみれば、そもそもドラマ編でも本当は牧の方が子どもで我儘だった。劇場版で部長が言っていたプライドが高くかまってちゃん、そして人の心をざわつかせるドS。そして何度も春田が言っていた「勝手に決めんなよ」。
この気質はたった一年じゃ成長しなかったということ。更にすぐに遠距離恋愛となってしまって、心が不安定になっていったことは理解の範疇です。
そして、「我慢しないと決めたんで」というのも「恋」や「人のため」だけでなく「自分の仕事」にも当てはまる。だっていい頃合いの男性が「恋」のため「春田」のためだけに仕事をおざなりにするのはおかしいもの。その心情のきっかけが狸穴との出会にもあるとしたら、それも当然の流れです。そのあたりの揺れは20代ならさもありなんと思っております。
そして春田の性格自体が大味(おおらか?)で、雑味があるゆえに翻弄される姿・・。
2人のドラマ後のあり方の視点としては初期設定からぶれていないと思うし、その性格設定ならこの様な展開は自然だなと思います(重ねて言いますが演出的に思うところはあります)。
とにかく2人の心情を丁寧に、かつ出てくるであろう「他のキャラクターを掘り下げて」の意見を汲むとしたら、それこそ2クール + 「扉」なるものが必要でしょうね。
とにもかくにも俳優陣のクオリティは高かったです。特にパンフレットの写真を見て、田中さんは風体はほぼ変わらないのに完全に「春田」(動いてないのに)。あなたの番ですの翔太とまったく違うのに驚きました。お芝居そのものでもそうです。翔太じゃない。また、林さんも「おっさんずラブ」の中だけ完全に「牧」。脱帽です。
まあ、テレ朝としては小さい劇場で心理描写映画を提供するスタイルにしたくなかったでしょうから、思い切った内容にしたと思います。そして、私個人はとてもわくわくして、リピーターになりつつあります。演技と曲がいい!!
スケジュール的には本当に厳しいと思いますが、シナリオブックの前日譚+@を作って放送していたら、少しは民の気持ちも落ち着いたのかもしれないですね。
今は、円盤に副音声で2人が語ってくれるのと、メイキング映像が入ることを願ってやみません。