「私が好きになった「おっさんずラブ」ではない」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD Mo Mizuさんの映画レビュー(感想・評価)
私が好きになった「おっさんずラブ」ではない
ドラマが大好きでDVDを買って何度も見て、友達にも薦めて見てもらい、映画化とても楽しみにしていました。あのドラマを、そのまま映画にしたら映画館でやる意味はないのかもしれない。それでも、ドラマと同じ面白さ、気持ち良さ、恋する気持ちの素晴らしさを感じられたら充分に満足だったと思います。
初見の印象としては、面白いシーンはたくさんあった、予告などによるミスリードもあったため驚いたところも多かった、要素が多すぎて混乱するけれど肝心のストーリーがどうなったのか、よくわからないというものでした。
一緒に見た友人は春田と牧が見られただけで満足していましたが「でも、最後どういうこと?」「部長と主任は、どうなったの?」と、やはり理解できなかった様子。
武川主任に注目して見ていた私も最後どうなったのか、はっきりわからなくてパンフレットや出演者のインタビューを読んで、なんとなく「そういうことだったのか……な?」と半信半疑で咀嚼しているところです。ファミリームービーと謳っているエンターテインメント映画で、この難解さは、どうなんでしょうか。
事前のプロモーションでは新キャストふたりを加えた「五角関係」と宣伝していましたが、ふたを開ければ新キャストふたりが恋模様に絡むことは、ほとんどありませんでした。これは「クィア・ベイティング」という批判も出ているように、かなり罪深いことだと思います。フィクションだから面白ければ何でもありということは、ありません。
映画ではマロと蝶子さんの年の差カップルが結婚を決意します。年上の蝶子さんは、ドラマ内で元夫が男性の部下に恋したため離婚しています。そんな悲しい思いを二度としたくないから、また結婚するつもりはないと言っていた蝶子さん。しかし、なぜか現在の恋人であるマロは、蝶子さんを傷つけた張本人である元夫に「蝶子さんを僕にください」と結婚の許可を得ようとします。この場面には「いろいろ間違ってるけど」と蝶子さん本人からのツッコミが入りますが、どういうわけだか、この流れで、結婚を承諾するかたちとなり、見ている自分は、どこにどう突っ込めばよいのやら。結婚を決めるのは当人同士であって、それより先に相手の家族や保護者に言うものではないし、元夫が元妻の再婚を許す立場にはありません。ましてや最初の結婚が破綻した原因は元夫にある。マロと蝶子さんが好きあっているのは伝わってきたし、お似合いの、かわいいふたりでしたが、映画のストーリーとしては、いろいろ間違いすぎていたので、もやもやが残ります。
もしドラマを知らずに、この映画を見て「楽しかった」という人がいたら、なんとか時間をつくってドラマ版を見てほしい。私が好きになった「おっさんずラブ」は2018年の連続ドラマです。