「単なる恋愛映画ではない」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD ミィさんの映画レビュー(感想・評価)
単なる恋愛映画ではない
連続ドラマのその後が描かれています。ドラマを見ていなくても楽しめる内容です。ただ、見ておいた方が映画までの空白の一年の間にあった登場人物の変化・成長がわかり、より多くの感情が湧くと思います。知っていると笑う場面も増えます。
キャスト陣の演技の素晴らしさを是非堪能していただきたいです。率直に言うと、わかりやすい心理描写は少なめだと思います。自ずと登場人物の表情や声から読み解くことになるのですが、説明的描写が少ない代わりにその演技が雄弁に語っており、不思議と心の揺らぎがわかります。その辺りの解釈について終わった後に誰かと語り合うという楽しみ方もできるのではないでしょうか。コメディシーンはおそらく何度見ても笑ってしまうほど面白く、素晴らしい演技合戦となっていますので、難しいこと抜きにして笑いたいという人は劇場まで足を運ぶ価値があると思います。
テンポよく物語が展開し、中弛みすることはありませんでした。一方、ドラマの時にあった登場人物の仕事以外の生活が描かれることは少なく、展開に少々唐突・ぶつ切りされた印象を受けることもありました。本作では仕事(夢)が一つの大きなテーマですが、その仕事のリアルな描写までは尺の問題か難しく、遣り甲斐について共感できなかったところが惜しいです。ただ、おかげで終始勢いがありますので、ここら辺は好みが分かれると思います。
同性同士でパートナー(家族)になるということ、恋と愛(信頼)の違い、仕事と愛情の両立といったことに踏み込んでおり、見終わった後は我が身を振り返って思うところが多かったです。タイトルのLOVEはただ相手に焦がれ求めるだけの恋ではなく、その先を指し示しています。ラブコメディの基本は失っていませんが、恋愛映画と一言で片づけてしまうには惜しい作品です。笑いたい方、切なくなりたい方、夢を追いかけている方、家族がほしい方……実は門戸が広いです。この機会に飛び込んでみることをお勧めします。
まだご覧になっていない方へ一言……是非エンドロールの後もご覧ください!ここがあるかないかで映画の印象が全く違います。