「渡る世間は鬼ばかり・・」マイ・ブックショップ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
渡る世間は鬼ばかり・・
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原作のペネロピ・フィッツジェラルドは30代の頃サウスウォールドの書店で働いており自身の体験も織り込んでいるのだろう。健気な戦争未亡人に慈悲どころか地元の権力者はもとより街中が利己的で残念な人ばかり、特に友人を装って裏切るBBCのミロ・ノースの背信は許しがたい。
唯一の理解者の老人もあえなく逝ってしまい心清き人がただただ虐げられる様を観せられるのは辛い。
ようやく最後に来て意趣返し、決して褒められる報復ではないのだが監督は情熱の国、スペイン人なのでどうしてもこのままでは終われなかったのだろう。
劇中でも手伝いのクリスティンが主人公のフローレンスに「あなたは優しすぎる、優しすぎる・・」とたしなめるセリフがあった、貧乏な家のせいなのか大人の世知辛さを子供の方が理解しているという悲しさは何なのだろう。
映画なのだからナレーションで要約せずに映像で表現すべきと思ったが最後になって声の主が長じて書店を営むクリスティンと分かって驚いた。それにしても知る由もない銀行家とのやりとりまで観ていたように主人公の心情を語るのは無理があろう。
フローレンスは時代に屈したが本を愛する志はクリスティンの中に生きていますという溜飲の下げ方は通俗的で分かり易いが、散々、ペシミズムに寄せたのなら「善良さとははかなきもの」として終わる覚悟が欲しかった気もする。
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