「破壊するものと破壊されるもの」マイ・ブックショップ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
破壊するものと破壊されるもの
書物による知識や学問がいかに大切か、田舎の人々にも教えようとする。ただそれだけのために念願の小さな書店を持つことが出来た戦争未亡人のフローレンス。唯一彼女の味方となってくれたのは引きこもり老人ブランディッシュだった。
レイ・ブラッドベリ著『華氏451度』を初めて知ったブランディッシュ。もっとブラッドベリの本を読ませてくれ!と懇願。多分古典文学ばかりを読んでいたであろう老人にとって画期的なSF作品。読書が禁じられた世界の恐ろしさを知り、人々は書によって知性を持たないと、支配者に屈服することとなる。フローレンスも知っていた支配階級と被支配階級。田舎に来ればそんな世界から逃れられると思ったのだろうか・・・しかし、現実は甘くなかった。
BBC職員のノースから紹介された小説『ロリータ』。この本を250冊も仕入れようか迷っていたフローレンスはブランディッシュに読んでもらい意見を聞くエピソードがある。このナボコフの書が作品内で暗喩するものは何なのかと考えてもみたが、どうしてもわからない。単にセンセーショナルだった小説を田舎の人が受け入れるかどうかを表現していただけかもしれないけど、原作を途中放棄してしまっているため真意はわからず。
それにしても小さな海岸の町が閉鎖的で排他的であることはよくわかる。さらにガマート夫人はロンドンの有力者とも繋がってるみたいだし、地方によくいる権力者の象徴的人物。さらにはライバルとなるべく新しい書店へ融資するのが貴族なのだ。人の心を知り、自分の目で物事を知る。そうした原動力となる書物を蔑ろにする権力者たち。政治家が人心を把握するためには愚民にすべきだという社会の縮図のような内容だった。
ストーリーはとにかく悲しい、悔しい、腹が立つというものですが、ビル・ナイの心意気はすごく伝わってくる。しかも、45年間独身でヒッキーなのだが、町の人や出来事を全て把握しているキャラ。それを書簡のやりとりだけで表現しているのだ。さすが名優!