劇場公開日 2019年10月4日

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「全編サビしかないバイオレンス映画の集大成」ジョン・ウィック パラベラム よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0全編サビしかないバイオレンス映画の集大成

2019年10月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ワケありな人々が集う聖域、コンチネンタルホテルを仕切る組織の掟を破ってホテル内で殺人を犯したために1400万ドルの賞金が懸けられたジョンにワケありな連中が次々と襲いかかる・・・からの全編サビしかない話。

とにかくドエゲツない血塗れバイオレンスが延々と続く。こういうのには慣れてるつもりの私でも二度眼を逸らしてしまうほど忖度のカケラもない。図書館の本やらナイフやら日本刀やら馬の後ろ足やらありとあらゆる手段で迫り来る追っ手を殺して殺して殺しまくるので、始まって5分くらいから後はもう色んな感覚が麻痺してずっとニコニコしていました。

もう古今東西のバイオレンス映画のエッセンスがこれでもかと詰め込まれている。あからさまに予告に滲んでいた『悪女 AKUJO』オマージュが漲ったバイクチェイス、セセプ・アリフ・ラーマンとヤヤン・ルヒアンを招聘してのシラットによる死闘、銃口を顔面に押し当てて連射するバイオレンスは『ザ・レイド』へのラブコール。ワラワラと出てくる黒ヘルのザコ刺客は香港ノワールの巨匠ジョン・ウーが多用していたもので『ドーベルマン』や『スズメバチ』といった90年代のフレンチバイオレンスの香りも漂っている。そして2作目と同じく『マトリックス』を観ている世代狙い撃ちのネタでしっかり笑いも取る。要するに隙がサッパリない。

今回敵のザコキャラの防弾装備が強靭過ぎて前作までのトレードマークと言えるダブルタップでは倒せないのでザコ一人倒すのにマガジンを空にするくらい銃弾を叩き込み、ナイフや日本刀や蛮刀で何度も何度もザックザクに切り刻む、クックパッドにアップしたいくらいヴァラエティに富んだ殺人レシピはとにかく眼福。

もう全編ギターソロみたいなキアヌ・リーヴスのアクションはもはや芸術。蝶のように舞い蜂のように刺す流麗なガン・フーのみならず、こちらにまで痛みが伝わってくるくらい激しく撃たれ切り刻まれても悠然と立ち上がる勇姿は途方もなく美しい。今回参戦したハル・ベリーもキアヌ先輩に肩を並べるくらい見事なガン・フーを披露、シャーリーズ・セロンへの対抗心を剥き出しにしたかのような鬼気迫る怪演。ランス・レディック演じるコンチネンタルホテルのマネージャー、シャロンが遂に発動する戦闘スキルも見事。

前作までに築き上げた世界観を堅持しながら、更にテクニカルかつ美しくなった映像も絶品。カーチェイスシーンだけで白飯を何杯でもお代わりできる濃厚な味わい。前作のクライマックスも相当複雑でしたが今回のそれはどうやって撮影しているのか皆目見当がつかないトリッキーなもの、『マトリックス』から20年、アクション映画も遂にここまで来たかと結局別に自分が何をしたわけでもないのに最後は高笑いしていました。これはバイオレンス映画の金字塔、大傑作です。

よね