「カフカ「審判」の恐怖がここに。」新聞記者 よしさんの映画レビュー(感想・評価)
カフカ「審判」の恐怖がここに。
政府の情報操作に翻弄される、新聞記者と若手官僚の苦悩を描いた物語。
この作品を鑑賞した際に、カフカの「審判」と言う作品を思い出しました。
主人公は身に覚えのない罪で裁判に呼び出され、そして無残に死刑に処せられる・・・そんな作品です。
読み終わった後に、言いしれぬ恐怖と不愉快さを感じたのですが、後書きを読んで納得しました。
カフカはドイツ近世の作家で、この作品はナチスドイツ勃興期に書かれた作品だということです。ファシズムが台頭する時代の、閉塞感や無力感、恐怖を現した作品だったようです。
この映画を観た後には、「審判」の読後と同じようなものを感じました。
婦女暴行事件、記録の改ざん、官僚の自殺。本来なら大問題になるべきことが、「矮小化され」「告発者が誹謗され」、いつの間にか「忘れ去られる」、そんなストーリー展開に恐怖を覚えます。
そして、表面上は、この映画と同じことが起こっている現代日本に、凄まじいまでの恐怖を覚えます。
この映画は、そんな日本の不気味さを、良く描いていると思います。
唯一残念に思ったのが、「軍事転用」の話が出て来たこと。少し突飛な話で、現実感が薄らいでしまいました。
そこまでの無茶をしなくても、十分に良い映画になっていたので、蛇足に近い設定だったと思います。
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