「全国規模で公開した各方面の努力に…」新聞記者 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
全国規模で公開した各方面の努力に…
平日朝イチ上映回。
レディースデーということもあるが、客席は高齢者の皆さんでかなりの混雑。
ここ数年で起きた実際の疑惑や事件を折り込み、現内閣の闇にあらためてスポットを当てた。
そして、同時にそれを見張る大手メディアの不甲斐なさにも激を飛ばす。
確かに今、テレビは放送法や様々な利権を人質に取られ、SNSに目配せし、独立した報道としてのパフォーマンスは見る影もない。
今一度、新聞というメディアが本来の機能を取り戻そうと一人の記者が奮闘する。そして内閣府に席を置く官僚もその意識に触発されて動き出す。
「記者としての挟持」
「親としての誇り」
一人の国民として、未来へ繋ぐ世代として。
松坂桃李・本田翼といった人気俳優を起用してもなお、各方面への圧力や忖度からメディアでの紹介はほぼないこの作品が、この選挙シーズン目掛けてちゃんと全国のそれもシネコンで上映され、初週の興業成績で10位とは。
もちろんもっとたくさんの国民に見てもらいたい気持ちはあるが、まずはこの独裁政権に負けることなくここまでこぎつけたスタッフの方々に敬意を表したい。
そして作品。
やはり主人公のシム・ウンギョンの素晴らしいこと!
あえて日本語が流暢でない彼女を起用したからこそ出る、あの真っ直ぐなメッセージ。
脚本にはいろいろ言いたいこともある(ミステリとして事件の真相が明確化されていく結果、本来現実世界で取り沙汰された国家全体の問題がむしろ限定的なものに矮小化されてはいないか。今回明かされる陰謀はちょっと非現実感とエンタメ感が強くて…)が、とにかくこの内容でこのキャストでこの規模で作り上げたその事実に、★4つを差し上げたい。
この作品は、「(描かれたことが)事実か?フィクションか?」という視点ではなく、「メディアやSNSに溢れる情報を、目に見えることだけ受け止めていないか」そして「あなたは、一人の社会人として恥ずかしくない仕事をしているか」を考えさせる。
そしてそのテーマはこのあと、我々観客に投げられている。
まず、子供たちへと繋ぐ働き盛り世代がしっかり観て考えること。そして、動くこと。
まずは選挙だ。