「コンテンツの限界」名探偵ピカチュウ 割さんの映画レビュー(感想・評価)
コンテンツの限界
舞台はポケモンと人間が共生する街で、"行方不明"の父を探すという内容。
日本のゲームを実写映画化するだけあってポケモンという作品への愛は感じられた。ポケモンの動きであったり技の描写やポケモンの毛並みなど、非常によく作りこまれており世界感自体に違和感を感じることは全く無かった。
しかし、ポケモンへの愛のせいか、本編に関係のないシーンも多くあり、それらを削れば話をもう少し凝ったものに出来たのではないかと思う一方で、それらが本作の魅力の1つであることも否定は出来ない。
主人公が父を探すことになるきっかけやピカチュウと行動を共にする理由、父の"行方不明"の真相、悪役の行動原理や思想なども違和感無く構成されていたが、推理要素は皆無で、幸運という名の行き当たりバッタリが繰り返されて真相に迫っていく様は、さすがは名探偵と言ったところだが、もう少し実力を見せてくれても良かったのではないかと思う。
だがきっとポケモンが広い年代に愛されるのが裏目に出たのだろう。難しい内容にして推理要素を強めれば、小さい子供は理解しづらくなってしまうため、「運」に頼らざるを得なかったのだと考えられる。しかし違和感を感じる程の神がかった運は無かった。
やはり対象の年代を広くすれば表現の幅が狭くなるのは仕方がないことなのだろう。しかし本作ではその幅を目一杯使っており、約2時間楽しむことができた。つまりこれがポケモンの実写映画化というコンテンツの限界であると言えるかもしれない。
恐らく今後またポケモンの実写映画を作るとしたらこれと同じくらいか、これ以下のクオリティになるだろう。
しかしながら本作のクオリティは普通に高く、ポケモンの実写化は成功である。一見の価値あり。