「原作を理解してくれるレジェンダリーの実力」名探偵ピカチュウ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
原作を理解してくれるレジェンダリーの実力
ハリウッドによる実写版ピカチュウ(ポケモン)である。
タイトルはゲームソフトの「名探偵ピカチュウ」だが、推理ミステリーというよりも、ヒューマンドラマ。主人公の青年ティムが、パートナーポケモンを通して、絆の大切さに気付かされ、ふたたび家族との関係を修復していくドラマになっている。
実写化になんの違和感もないどころか、レジェンダリー・ピクチャーズがこれほどまでにポケモンの世界観を理解しているのが嬉しい。
日本だけGW先行公開であるが、週明けには間違いなく世界的に大ヒットするはず。
レジェンダリーといえば、東宝との提携による、ハリウッド版ゴジラのシリーズ(モンスターバース)の3作目「ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ」(2019)が封切られるが、本作も東宝とワーナーとのタッグである。レジェンダリーの「GODZILLA」(2014)がなければ、その影響下にある「シン・ゴジラ」はなかった。
またクリストファー・ノーラン監督の"ダークナイト"3部作もレジェンダリーである。その流れをもっとも汲んでいるのは、実は本作にも出演している、"渡辺謙"の出演だったりする。(ゴジラもしかり)
ヨシダ警部補役の渡辺謙が、パートナーポケモンとして、"ブルー"を連れているのが面白い。吹替版も本人が務めているが、実際は英語セリフなのでリップシンクのズレが妙な感じ。
字幕版のピカチュウのCVが、ライアン・レイノルズなのも、観ているうちにしっくりしてくる。さすが"デッドプール"である。
登場するポケモンも多種多様。ひとつひとつの出来映えはリアルで、生態や嗜好をストーリーに上手く活かしているのが、お見事。
とくにバリヤードのシーンが傑作。またエイパムの暴走は、「グレムリン」(1984)をオマージュしているかのよう。
カラカラ、ブルー、 コダック、ルンパッパ、プリン、ベロリンガ、メタモン、ミュウツー、ヤンチャム、ドードリオ、フシギバナ、リザードン、ゼニガメ、ドダイトス、コイキング、ギャラドス、ゲッコーガ、ヒトカゲ、ビショット、カイリキー、ゲンガー、カビゴン、ニューラ、ドゴーム・・・気付いただけでも、こんなにたくさん。イーブイからブースターへの進化も見られる。
多くの3DVFX作品がそうであるのように、実写化のクオリティは、ひとつの技術的ブレイクスルーを迎えた。
吹替版の竹内涼真が、劇中でポケモントレーナー役で一瞬出てくる。これでもハリウッドデビューには間違いない。
主演のティム役を演じているのは、「ジュラシック・ワールド 炎の王国」のジャスティス・スミス。ウィル・スミスとの血縁関係はない(ウィルの息子はジェイデン)。
ちなみにレジェンダリーは、「機動戦士ガンダム」の実写化も発表している(製作はこれから)。
(2019/5/3/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/吹替翻訳:桜井裕子)