運び屋のレビュー・感想・評価
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イースト監督 いつも通りの安心安定の佳作
この人の作品はいつも平易でドラマは快調、主題は明確で正攻法ですが、今回も期待通りの内容でした。老人の孤独感と矜持が上手く演出されているというか、自分で演じているんだから当たり前というか、なかなか切ないです。
仕事よりも家族を大切に
90歳の役
100歳まで生きた新藤兼人をはじめ、日本でも長寿の映画監督は数多いるが、晩年になるまで映画は作っても主演を果たした例はない。
87歳にして90歳の役を演じたクリント・イーストウッドは、人間は何歳になっても挑戦できるという希望を与えてくれた。
主人公のアールは老いのためかセリフ回しこそ小声で力がないが、辛口ジョークを交えた毒舌トークは冴えわたる。麻薬王の役でマフィア映画で有名なアンディ・ガルシアが登場するが、今の姿にビックリ!その麻薬王に招かれたパーティーではアールのまさかの濡れ場も・・・
家庭を省みず、仕事一筋に生きてきたアールが、不法とはいえ麻薬の運び屋で稼いだ巨額の報酬を困っている人たちに寄付をする、そして、最後には自分の半生を懺悔し、家族愛に目覚め、潔い決断をする、その行動に心を打たれた。
おじいちゃんがいつ撃たれないかヒヤヒヤする(笑)
おじいちゃんがヤバいところに足を踏み入れて最後は一家離散でもうメチャクチャだ~~!!という感じではなく、飽く迄もお小遣い稼ぎで半ばメキシコ人たちに利用されるお話。おじいちゃんが実はメッチャキレるだとかメッチャ強いだとかそういう事もなく、その辺のご老人が参画するような感じで面白かった。実話であるが故か。
そんなおじいちゃんも”人生経験”だけは他の誰よりも豊富なので、そういった部分でマウントを取ってメキシコ人や警察官とやり合えるある種の爽快さが有って新鮮だった。決して急にとんでもアクションをするとかでもなく、むしろいつ撃たれないかヒヤヒヤするような状況でまるで息子の相手をしているかのように説教を始めるのは結構爽快です(笑)。
アクションや特別な能力に頼ること無く、一人の人間として、人生の先輩として彼らに真摯に向き合う新しいスタイルで、なんだか新しい職場ですぐに助けてくれた心優しいおじちゃん先輩を思い出すようなそういう感覚で見れる映画です。
今見るとおじいちゃんが頑張ってる映画、でも自分が歳を取ってから見ると、また違うのかも。
久々にいい映画を観た
自分勝手なのに何故か憎めない
時代錯誤の差別用語をいうかと思えば
その一言が的を得ていたり、しみる言葉だったり。
序盤から「もう運ばないで」と思いながら見る。
時代遅れで不器用なとこもあるのに、
機転を利かせ次々に運ぶ。
いずれ終わりが来るのだろう
その結末はずっと号泣しながら観た
エンディングは歌詞も含めめちゃめちゃ良かった。
【イーストウッドの集大成】なんて書かれていたけど、
さすがというか、これが本物ということなのだろう。
人生や老いと向き合うイーストウッドの姿
運び屋が運んだものは・・・。
クリントイーストウッド。
おじいちゃんの役上手になったなぁ
なんて思ってしまった。失礼。
この人は、思ったことは言うし、
気付いたことはやる人なんだね。
思ったんだからしょうがない。
気付いたんだからしょうがない。
だからそこにウソがないんだね。
ウソがないから人を惹きつけるんだ。
麻薬組織のイカツイ奴でさえも。
・・・残念ながら家族以外は。
「大金があっても時間だけは買えない」
そんなありきたりな教訓も、
91歳のアールに言われると重みが全然違う。
今日、私は思ったことを素直に言えただろうか。
先回りして考えて「どうせ・・・」って、
やってないことはないだろうか。
自分の人生にウソはつかない。
そんな90歳になれるように。
がんばろう。
って思った。
実話のリアルとスリル!
イースドウッド監督の覚悟を感じる作品
やはりイーストウッド監督作品は一味違う。年老いた麻薬の運び屋の話しに、仕事命の男と家族の話を巧みに織り込み、男の生き方を問う人間ドラマに仕上げているのはお見事。全編、淡々と進んでいくストーリー、イーストウッドを筆頭にした演者達の表情で、リアルな作品に仕上がっている。
本作の主人公は、退役軍人であるアール・ストーン(クリント・イーストウッド)。彼は、家族より仕事を優先して生きてきた。彼は、園芸業で成功を収めるが、インターネットの波に飲まれ、窮地に追い込まれる。そんな時、運び屋の仕事が舞い込む。彼は引き受けるが、やがて、運ぶものが何かに気付く。そんな彼に過酷な試練が訪れる・・・。
メインテーマは、運び屋ではなく、仕事と家庭。普遍的というか日本人には身近過ぎるテーマである。家庭を顧みず仕事を優先する主人公の姿は、イースドウッド自身の過去を重ね合わせたものだろうし、日本男性にとっては、リアル過ぎる問題である。但し、イーストウッド演じる主人公は仕事に追われるのではなく、脚光を浴びたいタイプである。彼は、家庭での幸せより、外の社会での脚光を求める。当然、家族には理解されず、家庭に居場所はなくなる。
主人公は生真面目ではない。老いを受け入れず、自分らしくあろうとする。特に、スーツを着たときは、色気すら感じる。彼は、運び屋としての旅をエンジョイしている。危ないところは、人生経験に培われた機転で上手に免れる。老いを楽しんでいる雰囲気がある。彼の心情はラストソングの歌詞に如実に現れている。歳を重ねても、自分らしく生きることの大切さを表現している。
そんな彼も、ラストは、人間らしい選択をする。遅きに失した感はあるが、本当に大切なものに気付く。
イーストウッド監督は、80歳を超えて監督と主役を熟している。映画に賭ける並々ならぬ情熱を感じる。達観せず次を意識させるラストソングに命ある限り映画を作り続けるのだという覚悟を感じた。
人気者になるのにお金はいらなかった
人生で大切なもの
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