運び屋のレビュー・感想・評価
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その身体から滲み出るオーラというか、陰影深さというか。とにかくその魅力に滅多打ちになる
颯爽と現れ展示会の空気をさらっていく彼の姿は何とも言えないチャーミングさに満ちていた。が、そこから全てを失った彼のほうが、身体から放出されるオーラというか陰影の深さが明らかに違って見える。イーストウッド作の主人公は、人々の真ん中よりも、こうしてアウトサイダーとして佇んでいるのがよく似合う。
ご老人が危険なブツの運び屋になる。たったそれだけでも物語として完璧なのに、御大はそれに加えてにわかに「この国のかたち」を描いているように思える。それは様々な人種間のやり取りに集約されるのだろう。この主人公に壁なんてない。誰とでもうまくやれる。時には差別的なジョークを介しながらも、それについて指摘されると、ああごめんな、と笑って謝る。そのやりとりが実に軽妙で、また愛おしい。
人々の分断なんて、我々は軽く飛び越えられるのだよ、という心の声がどこからか聞こえてきそうだ。この芳しい香りにまたしてもやられた。
これはハリウッドに絶えて久しいスター映画
商売の近代化に後れを取った老園芸家は、家族との付き合い方にも失敗して、今や破産寸前の独居老人である。しかし、彼には商売柄アメリカ各地をトラックで旅するという経験があり、それを"買われて"コカインの運搬人というニュー・ビジネスにありついた。さわりだけでも実話とは思えない面白さがある上に、監督&主演(10年ぶり)のクリント・イーストウッドに余人には代えがたい適材適所な個性と味わいがあるから、冒頭から思いっきり震えながら笑える。もの凄くやばいのに、飄々と危機に対応していくイーストウッドを見ていると、むしろわくわくして来るのだ。相手が誰だろうが自分の経験値と、そこで培った価値観を元手に堂々と対応する主人公にイーストウッド本人の実像が重なる時、本作「運び屋」はハリウッドに絶えて久しいスター映画の再来を実感させるのだ。今年88歳のスターは、勿論、現役最長老。永遠には続かない贅沢な映画体験を、是非。
A・ガルシア、音楽アルトゥーロ・サンドヴァルのキューバ人脈にも注目
「人生の特等席」が2012年なので、あれから6歳位年を取ったイーストウッドがスクリーンに映っているのだなあと感慨。最近観た中では「マイ・ブックショップ」のビル・ナイなどもそうだが、老名優は皺が人生の年輪のようでそれ自体に味がある。本作は実話に基づくが、家庭人とは言い難かったイーストウッドの人生にも重なってみえるように作った点は自虐か、開き直りか。
意外だが、麻薬カルテルのボス役のアンディ・ガルシアとイーストウッドは初共演。ガルシアは、同じキューバ出身のジャズトランぺッターであり「マンボ・キングス」などハリウッド映画にも長年関わってきたアルトゥーロ・サンドヴァルの伝記映画で主演したことがあり、ガルシアが橋渡しになり本作の音楽担当が決まったとか。ジャズ好きのイーストウッド、さぞかし喜んだだろう。ただ映画全体の音楽の印象は、主人公が運転中にラジオに合わせ歌うカントリーのイメージが強いけれど。
ロウソクは、消える直前に最も明るく燃える
きみも後期高齢者になれば分かるだろう
・・監督はそう言ってくれているように思った。
「闇バイト」が巷では大はやりだけれど、
労働は面倒くさくてお金だけが手っ取り早く欲しい彼ら。
そんな《若者たち》だけでなく、いまや生活困窮者の《中年》や、
そして生に迷う《老人》たちも捕まっている。
老人は生きるための理由が欲しいのだ。
それがどのような頼まれごとであっても、自分が必要とされることが例えようもなく嬉しい。
忘れ去られることは辛い。
だから声を掛けられると舞い上がる。
だから《老人》は薄々詐欺だろうと感じていても誰かの役に立ちたくて、また役に立つ自分でいたくて 、自らオレオレ詐欺の仲間として立候補し、そして生きることの躍動に悦びの涙を流すのだ。
・・・・・・・・・・・・・
「運び屋」、
原題 The Mule =“薬”を運ぶ驢馬のこと。
運送業ですね。#mee too now
花卉栽培農家ですね 。#mee too ago
本作は、90歳で闇バイトに堕ちていった老人の姿を、僕たちに哀しく見せてくれる社会派映画だった。
「グラントリノ」以来、クリント・イーストウッドは、自らの老いと、枯れてゆく肉体に、自身、抑えようもない興味と魅力を感じているに違いない。
つまり、「今のこの自分にしか表現出来ないその世界を」彼は自分の老いた姿をまな板に乗せて演出している。
老境に至ってこそ、演じて、遺して、
そして伝えておかなければならないものを、監督が我々に見せてくれるのだ。
うまく愛してやれなかった。そして上手に一緒に暮らしてあげられなかった妻と子供たちに、
死ぬ前に何とか償いを果たしたい男アールの、最期の償いと足掻きだ。
イーストウッドの老年期の作品群は、実にそこにテーマが集中している。
「あなたはいつも外にいたわ」。
「あなたは遅咲きの花」。
「でも帰ってきてくれて嬉しい」。
これがアールの妻の最期の言葉だ。
・・
けれど、
僕はもうひとつのクリント・イーストウッドの横顔も観察する。
【へそ曲がりな彼の本当の姿】だ。
画面を観ていると、アールは涙涙の帰宅を果たしてようやく家庭人に戻った・・という100%の感じでもない。そこがとっても面白い部分だと思う。
仕事一途の男や運送業の男は、
妻子とは、昔も噛み合わないし、今でもそのまま噛み合わない。ずっとすれ違ったままなのだ。
(僕もそれで家庭をダメにしたからイタいけれど・・)、
運送業の映画も、老人の映画も、どれもちょっと哀れなものだ。
一日しか咲かないデイ・リリーを植えながら、この独りよがりの男は
そのうち君たちにも分かるよと、監督はしわがれ声としわくちゃの顔で
男の人生の結末を教えてくれる。
そしてもう一言、こう呟いて付け加えることを忘れていない
「後悔もあるが、どうしようもない。これが俺なのさ」。そんな彼の心の声が聞こえてくる。
西部劇のガンマンだったイーストウッドの語るのは、男の強がり。「これが老いぼれが終わっていく姿だぜ」とうそぶく彼。
あの横っ面よ。退役軍人らしく、ベタで甘ったるいラストにしないところが、破れてて正直だし、彼らしくて可笑しい。
やんちゃ 上等と思わないか?
娘は言っていた
「お父さんがどこにいるのか分かっているから安心よ」⇒刑務所(笑)
・ ・
日本では
65歳以上の高齢者、930万人が働いている。
年金だけでは足りないものね。
そして意地一本で、日本のアールたちも、きょうもどこかで生きていて、 ロバのように走っている。
お金よりも重要なもの。
家族よりも大切なもの。
―「自分のちんけな夢」を、デイリリーの夢を喰って生きているアホな連中がいるのだ。
予告編を見てから見ると…
何よりも家族を大切にしろというメッセージは強く伝わってきたが、内容は薄っぺらく感じた
何よりも家族を大切にしろというメッセージは強く伝わってきたが、内容は薄っぺらく感じた
家族をないがしろにしてきた男が職を失い、ひょんなことからヤクの配達人に
金の余裕を得てから家族に目がいくようになり挽回を図る
ヤクの配達人である必要性全くない
着想を得たと最後にあったけどそこから作ってメッセージ性ねじ込んでるから余計な要素にしか感じない
職を失ったけど新しい仕事始めたら成功したでも全然通じる
悪者がガバガバすぎる
いつでも見てる(見てない)
後ろからずっと付いてくならお前らが運べ
スマホ持たせてんのに見失うな
弱みを握っておけ
配達だけで金払いすぎ
挙句の果てには仲間割れ
こいつらほんま・・・
伝説と謳ってるけど全然そんな描写ない
言うてるだけ
イーストウッドファンでも無ければ率先しても観るようなもんでもない
虚栄心への執着
タイトルなし
the America
これは名作!アメリカを代表する名俳優による、アメリカらしい家族愛をテーマにした、アメリカ文化を感じられる映画です。テーマは家族愛だと思うけど、ハラハラする場面や思わず微笑んでしまうシーンが多く最後まで惹きつけられました。
イーストウッドの存在感が凄すぎる!
たまらない空気感
イーストウッド健在!
達成感も挫折感もない不思議な味わい。いろんな場面に自作のセルフパロディが散りばめてあるように思える。例えば『ミリオンダラー・ベイビー』。これはネタバレになるので詳細は明かせないが、病室で元妻を看取るシーン。ここは女優さんの演技が凄すぎて、本当に家族の臨終を見ている気になる。
それから『人生の特等席』での娘とのギクシャクした関係性とか、『パーフェクト・ワールド』での追う側と、逃げる側の付かず離れずの距離感なんかは、まるでもう一度あの映画たちを体感している気分になる。やっぱりイーストウッド作品特有のリズムとか、空気が全編にわたり支配していて、心地よく身を委ねられる。
隣で爆睡していたおデブさんのイビキには辟易させられたが、それすらも映画の一部に思えてくるから不思議だ。大抵は、派手なアクション映画で私自身、寝落ちしてしまうことがよくある。それは展開がわかっていて、おそらく主要な人物の誰も死なない、そして派手な音楽を伴うシーンでよくある。これは自分の意思とは無関係に起きることで、それを理由につまらない映画だったとも思わないようにしている。
だけどこの映画は、とても静かで展開もゆっくり。イーストウッドがド派手なアクションを繰り広げるはずもなく、一見して退屈な映画に思えるが、なぜか全く眠くならない。それは編集が巧みで、主人公の身の上に必ず何か展開が起きていて、大きな話の流れを忘れないからだ。それはセリフのひとつひとつまで磨き込まれ、含蓄のある言葉として身体に沁みてくる。そう言えば、字幕担当は、松浦美奈さんだったが、相変わらず的確でいい仕事ぶりだ。「99歳の老人だけが100歳まで生きたがる」なんて、セリフ以上に文字が語りかけてくる。
とにかく、イーストウッド健在。そして、またあの苦笑いが見られて良かった。
エイジ・ドライバー
実話ベースと聞き、本当に驚きました。
もちろんキャラクターの性格や家族の話しは脚色だと思うけれど、
87歳の老人が10年間に渡り、麻薬カルテルの「運び屋」として、
一ヶ月に200キロ以上のコカインを、
シカゴへ運んでいたのは事実だという。
アール(イーストウッド)が機転を効かせてピンチを
切り抜ける描写がなん度もある。
❶まず、年寄りで疑われなかった。
❷運転が上手いし、法令を守る。
❸運転手に徹した。
❹楽しみながら仕事に励んだ。
中南部イチ美味いサンドイッチを寄り道して食べる。
アールは「運び屋」をやる前は食い詰めていて、家は競売に掛けられ、
娘の結婚式の費用も負担出来ない、と金に困っている。
「運び屋」をやるとなんと【ふた束】の報酬をもらい目を丸くする。
《金のありがたみ》
①新車に買い替えた。
②家を取り返した。
③退役軍人クラブの維持に2万ドルを寄付。
④孫娘の結婚式にお祝いとフリードリンクの費用を持てた。
⑤皆から尊敬されるそんざいになる。
やはりお金はいい物ですねー。
これなら悪いことをしても、お金は大事だし、ほしくて当然、
的な気持ちになってしまった。
鼻も引っ掛けられない老人が一端の要人になるみたいな?!
もちろんアールは最後にツケはキチンと払いますよ。
FBI捜査官でイケ面のブラッドリー・クーパーが出演してます。
本当に良い男でセクシー!!
その上司の警察幹部がローレンス・フィッシュバーン。
ラストが泣かせます。
長年、別れてから、嫌味ばかり言われる元妻のメアリー
(ダイアン・ウィースト)を看取るアール。
メアリーの最後は満たされた。
クリント・イーストウッド監督が、10年振りに主人公を自ら演じました。
この後に「クライ・マッチョ」2021年がありますが、
94歳になられたイーストウッド監督の、新作の便りは聞こえてきません。
あともう一本、観れたらどんなにか良いでしょうね!!
美味しい仕事には罠がある
88点 人生とはなにか?お金で買えるものは何か?
人生の失錯
冴えない男を装いながら、実はめちゃくちゃな能力を備えた超人(そんなキャラはアチコチの映画では見かける)……そんな下地は無いのに、優能力者の様な余裕をまとっている。
他のヒーローとは違って、徒手空拳で進んで行く。
いつ失敗するのか……これってフラグじゃ?…とかドキドキ厭な気持ちにさせ続けられた。
そんなハラハラをよそに、周りの皆んなを懐柔させていくアール、これこそヒーローの持つスーパー能力に匹敵する能力なのかも。
しかし、周りを惹き付ける自由気ままな生き方にも失錯がある……。
そして、時間は買う事が出来ないモノだ。
どちらを選んでも選ばなかった方に失錯が生じる事になるのだが、最期の最後は仕事より妻を選ぶ。
奨励される生き方では無いかもしれないが、深く突き刺さる生き様だ。
何が悪いとかそれはダメだ、といった批判抜きに没頭させる力強さの在る作品。
アールが育てた花! 家族の時間が経過した先に見えてきたもの
運び屋の仕事をしてきたアールは、仕事を
真面目にしてきた男性だったと思いました。
しかし、前妻のメアリーは家に夫のアールが
いない寂しい思いを募らせていたと思いました。
孫のジニーの結婚式に現れたアール。
華やかな花束も虚しくなるほど、冷たい
扱いをされたアールに声をかけてきた青年が
思い遣りがあったのが救いに見えました。
財産を失いそうになったアールにメキシコの麻薬組織の仕事が舞い込んだ!
車で荷物を運ぶ途中、警察にバレそうになりながら、機転を利かせて切り抜けるアールは
人生の酸いも甘いも噛み分ける、成熟した
男性の姿でした。
運び屋の仕事の途中でアールがメアリーの
葬儀に参加できたことは、家族の再生を
表現していました。
アールが警察に逮捕されて、裁判になったけれど
自分の人生間違いだらけだった。
と呟く場面は、悲しさを振り返る気持ちで
見ていました。
刑務所で花を育てることにより、家族の愛を
育てたかった心情が伝わるストーリーでした。
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