「高評価多い中恐縮ですが…」機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ takeさんの映画レビュー(感想・評価)
高評価多い中恐縮ですが…
映像が非常に綺麗。美しいです。
もちろん、人物やモビルスーツの動きも綺麗。
ギギ周りのドラマや描画が異様なまでに力が入っていて、ギギがこの映画の主役だと言われても頷けます。
最初から最期まで割りと集中して観る事が出来ましたし、小難しい事を考えなければ十分に楽しめるクオリティだと思います。
声優さんもウリにしていて、声優さんをアイドル的に好きな方は放映後のトークもあり、それだけでも見る価値はあるかも知れません。
私の連れの2名は、次回作も観にいきたいと言っていましたが、私はもうお腹いっぱい。
以下、内容についての感想。
ハサウェイ達の組織はいわゆるテロリスト集団。
限定的にしろ、無差別虐殺やってます。
作中、ケネスを筆頭とする連邦組織は、法に基づいてそれを取り締まり、撲滅しようとする組織。
この映画を見る限り、連邦軍は真っ当な事やってるようにしか見えませんし、これがテロでは無く戦争だと捉えたとしても、マフティーの正当性がほぼ見えてこない。
状況を理解させる描写があまりに少ない。
もしくは私の理解力が足りないのか。
なので、ハサウェイが少々苦悩するシーンがあっても、私から見ると『厨二病を拗らせたタチの悪いテロリスト青年』にしか見えないのです。
ハサウェイ回収の為の作戦行動においても、主体のはずのハサウェイが自ら作戦を滞らせる始末。
仲間の命がかかっているのにも関わらず、恐怖に慄くギギを憐れに思い連れ回します。
ギギの安全確保だけなら他にも方法はあるはずだし、組織の中心的人間として、出会って間もない女と歴戦の仲間と天秤にかけた場合、切り捨てるべきはギギでしかない。
そもそもそんな状況を作り出してるのは自分達である。
大義の為に無数の生命を散らしている責任感も覚悟も感じられない。
過去のトラウマがあるにせよ、もちろん、完璧な人間性を求めるわけでもないが、中身が支離滅裂。
当然そんな色ボケ主人公に、感情移入する事は出来ませんでした。
更に考察します。
マフティーは、戦争(テロ)によって現世界のシステムを覆そうとしています。
しかし、それは、シャアがやろうとした事と全く同じ事で、どんなに手段が違うと叫ぼうとも、本質は同じでしょう。
『シャアで良かったじゃん』
なのです。
地球に居座る既得権益ズブズブの、庶民は搾取対象としか考えないような連邦高官を減らせるし、カリスマと指導力、政治力がある分、
『シャアのが良かったんじゃね?』
とも思えます。
『閃光のハサウェイ』は、そんな矛盾を本質的に孕んでいるのではないでしょうか?
それ故、ギギにお株を奪われずとも、ハサウェイは主人公にはなれないのです。
原作は、とても衝撃的なラストが目を引きますが、富野監督の、作品制作における様々なアプローチのひとつであり、最低限のクオリティはクリアしているものの、昇華しきれなかった試作品的な意味合いを内包している作品ではないのか、というのが私の原作に対する認識です。
原作自体は、それまでのガンダムシリーズより優れているとは思っていませんでした。
なので、映画化の話を聞いた時、とても不思議でした。
今更拾い上げるほどの名作なのか?と。
こう考えてくると、状況説明そっちのけで、ギギの描画を、ギギの人物背景更にそっちのけで、主役ばりに艶めかしく描いたり、
市街戦を、ストーリーそっちのけで間延びしてでも見せ付けようとしたりと、作品の本筋を乱すような演出も納得がいきます。
色んな大人の事情も含め、原作の料理に困った監督さんが、敢えて本筋とは少しズレた部分を使って、作品のクオリティを上げようとしたのかな?などという、きっと的外れな憶測をして私の中の結論と至りました。
三部作の最初だから、とも言えますが、最初だからこそもっと掴んでくるものが欲しい、と思います。
以上、個人的感想ですが、私自身、拾えてない部分も多々有ると思いますので、ご指摘いただけたら幸いに思います。
追記
レビュー投稿後、他の方のレビューをちらほら見ていると、私に無かった視点や見逃していた部分を発見出来て学ばされるものがあり、刺激的でした。
今後メディアで見る機会があれば、是非もう一度見てみたいと思います。
最初の偽マフティーを制圧した時軍部のケネスが「純粋なものを感じなかった」から偽者だと思った⬅︎いや、動機が純粋か否かではなくテロという手段がそもそもダメだよね?
ハサウェイが自分が逃げるために自分のいる階から上を狙って攻撃させると言った時⬅︎それって世直しテロでもないよね?上階の政府要人もついでにヤれるからかと思ったら、実際の攻撃では他のホテルも爆撃してるし。
と色々ツッコミどころ多かったのを論理的にまとめてられてて、分かりやすかったです。