「ハサウェイは誰?」機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ tomologhさんの映画レビュー(感想・評価)
ハサウェイは誰?
48歳、むかーしガンダムIIIを映画館に観に行ったのが誇らしい、とてもライトなガンダムファンです。
たしか中学生の頃に書店でNewtype創刊号の表紙に新しいガンダムを発見してびっくり!でも衝撃のラストにトラウマを抱え、Z Zに期待するもあのセンスは全く受け入れられず、もうガンダムはオワコンかと諦めつつあったら逆襲でどんでん返し。
その間、小説版ガンダムはアムロが○○し、ベルトーチカチルドレンと映画とは話が違うし。そもそもリーンの翼とかオーガバトラー戦記とか、富野御大の小説は結構エグい。好きなんだけど。他にないセンスで大好きなんだけど。
それは置いておいて、逆襲の続きの(ベルトーチカの続きなのかな?)小説版閃光のハサウェイを楽しみに読んでみれば、ナニコレ?
10代の自分にとってギギは全く魅力的に見えず、ケネスはエロくて偉そうでウザいおっさんにすぎず、ハサウェイはウジウジ野郎で、何がしたいんや!ギギとくっつかへんのかいな!クスィーガンダムもカッコよくない!ペネロペーってどういう意味よ!と大いに鬱憤を感じながら最後は何とかしてくれるのでは?
と甘い期待をしつつ読み進めればあのラスト。
もう言葉を失いましたね。
読者を楽しませるつもりがないんか!富野ぉー!!!
、、、と心の中で叫んでからはや30年?
まさか映画化されるとは!
というわけで恥ずかしながら生まれて初めての4DX で鑑賞して来ました。
事前に冒頭15分と予告を何度も観て大興奮。
コレはなんか違うぞ!
最初は良かったけど最後がアレなユニコーンとも違いそうだぞ!
本編100分も無いのにyoutubeで15分も観せてくれるのは嬉しいけど1900円かよ!4DXなんて3100円?
と感じながらも妻に内緒で観に行きました。
もう、何というか、コレが本物のガンダム。
現代のガンダム。令和のガンダム。リアルなガンダム。
映像に関しては本当にリアル。カッコいい。戦闘がシーンが暗いのも仕方ない。夜襲だからね。
一つだけ言いたいのは、モビルスーツの戦闘の恐ろしさと美しさを一枚絵で表現してくれたあの火花散るようなシーンは本当にすごい。
まあその辺は得意でないので他の方のレビューにお任せするとして。
私が一番感じたのはキャラクターの描き方が本物すぎる。
セリフじゃないところの人物の演技、表情がすごい。
もはやアニメじゃない!ホントのこぉとさぁ〜(笑)
おっさんになるとわかるギギのアンバランスなヤバい魅力。
ケネスの嫌らしさへの共感。仕事はキチンとする男だよね。
そしてハサウェイ。
10代の自分からすれば、なんてカッコよくない!こんなヤツ大嫌い!という主人公でした。
でも今見ると、なんでしょう?
昔の自分を見るような心持ち、とでも言えば良いのでしょうか?
アムロとシャア、飛び抜けた能力の持ち主たちに触れ、クェスのようなエキセントリックな女子にモロ影響されて自分も何か出来る男だと勘違いして、やらかしてしまう少年。
そしてやらかしてしまった後悔から、過激な道を選んでしまう、若さ。
性急なんだよね。待てないんだよね。そんなに急いだら何かが歪んでしまうよね。
こんなハサウェイが若い頃は大嫌いでしたが、何故なのか?
つまり自分なんですね。若い時の自分の嫌らしさ、性急さ、過激さ、幼さ、恥ずかしさ、情けなさ全てが入ってしまっている。
こんな主人公を好きになれるわけがないですよねー(苦笑)
やだー!もう!甘酸っぱいの甘さが全くなく、ただすっぱいだけー!!
でもおっさんになると、すっぱいものの良さが分かるわけです、はい。
そして懐かしい。
若い頃の、世の中に対する怒り。何も出来ない自分に感じる無力感、焦り、苦痛、無能感。なんとも苦々しく表現できないもどかしさを。
そんなこんなをちょっと思い出すことが出来ました。
(本当は大人になっても何も変わらないのですが。日々の生活で誤魔化しているだけで。)
そしてラストの海の甲板のシーン。
あれだけ人を殺す作戦を実行しておいて、なんて太陽がいっぱいの夏のシーン。(ハサウェイはアランドロンだったのかも?)
真っ暗な戦闘シーン、鬱な逃避行のシーンからあの夏の海の部活のような青春シーンにつなげた演出に脱帽です。
面倒な人間関係を切ることができた、なんて独白があったような気がしますが、なんて甘っちょろい。
あれ??青春映画だったの?と観客を落ち着かなくさせるギャップ。
その矛盾を風景で表現しているのが素晴らしい。と感じました。
新しい。アニメを、日本映画を超えています。
ぜひみなさんスクリーンで。