「行間から読み取るような映画がヒットしているのが嬉しい」機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ fulafffさんの映画レビュー(感想・評価)
行間から読み取るような映画がヒットしているのが嬉しい
いわゆるアクション系ブロックバスターやセリフで感情が説明されるような、わかりやすい映画ではありません。
あの伊藤計劃の「虐殺器官」映像化で、すでに手腕を見せていた村瀬監督。
常に性悪説の立場から、必死に人類の未来を模索する富野氏の過激な小説。
この融合というだけで、期待せざるを得なかった。
人間社会の中で、比較的高い能力を持って苦悩する若者達から、愚か者たちが壊してしまう世界と、その交流と離別を必然的に描く物語として、満点の出来。
3人の若者の、凡人には不可能な過激なやり取りの出会い、互いに惹かれ合いながらも、安易に関係性を構築することはしない姿勢。
興味と反感の混じった辛辣で軽妙なやり取りで、本質的に理解し合いながら、寄って立つところの違いを確認していく、この描写がたまりません。
ご飯の食べ方や座り方、生活習慣への諫言で関係性を示していくところなど、まるで山田尚子監督の「リズと青い鳥」のように人間同士の普通のやり取りからの機微を積み重ねて、今回のラストに至るわけですが。
ケネス氏の、まるで現代の青年実業家のような、剛腕さと包容力の強さを見せられてのラスト、脱帽です。
私はモビルスーツやガンプラには一切興味がないのだけど、宇宙世紀のの歴史感は好きです、それでもちょっと冒険だなと思う映画でした。
ガンダムとしてみると、戦闘はどちらかと言うと巻き込まれる側の描写がメインで、MSは脇役、政治劇や外交劇も少ない。
それでも、このような微細な表現に隠された強い感情を読み取る映画が、ガンダムファンの若者たちに広く支持されている様子には、今後の映像界を思うと勇気づけられるものがあります。
同じ監督の虐殺器官
極限の機微を描いたリズと青い鳥
おすすめですよ。