「ハサウェイの小ささより、シャアの悪さにビビる」機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ オショロコマさんの映画レビュー(感想・評価)
ハサウェイの小ささより、シャアの悪さにビビる
ハサウェイの小ささを痛感した映画だった。
ハサウェイの正体に気が付いたギギ。ギギは恐らく自分自身の境遇に満足しておらず、マフティに正しいやり方を期待する。しかし彼は、「神様しかできない」と逃げる!もうテロリストのボスやってんだったら、その先も考えて、ドンと受けろよ!もしもシャアだったら、有能な人がいれば、どんな手を使っても味方に引き入れる。子どものクェスだって自分への好意を利用して戦争に引き入れた。根っからの悪人だ。ハサウェイは正直だから、それはできないと答えてしまう。ギギの心が離れるポイントの大きなところだ。
ギギの心が離れたもう一つのポイントがある。大権力者の愛人のギギは、いつもしているであろう無防備な着替えのふるまいをハサウェイに見られるのだが、そこにハサウェイは「そんなことする人間か!」的な説教をする。それに対してライバルのケネスは、ギギが自分のその境遇を告白した時に、それを受け入れる。人間の大きさの違いを見せつける。ちなみにハサウェイは、「ギギは自分の正体をケネスにバラす。」という疑念を抱き、一刻も早い脱出をする。そのため、ギギには挨拶もせず、ケネスにサヨナラの伝言を頼む。ここにも、ギギを信頼できない心の小ささ炸裂だ。
この2点をギギは知り、ケネスにハサウェイの正体のヒントをわたし、ケネスは気が付く。このシーンの失言、ハサウェイ同様に素直な私は、ギギがミスって失言をしてしまったと思ったが、妻に話したところ、「賢いギギはそんなミスをしない、それはわざとだ」と言われた。確かにそうだ。ギギは超絶賢いんだった。このくだり、ハサウェイに失望し、自分の境遇を受け入れてくれるケネスに気がついた直後だった。
ちなみに、ハサウェイは戦火の中、ギギを連れて逃げるのだが、それによって味方の作戦に支障をきたす。ここ、シャアだったらどうするだろうか。自分の正体に気が付いた危険な人間。シャアなら間違いなく、空襲で死んだような風情になるように手を下していただろう。味方に引き込んで連れて行く気がないのなら、シャアなら「君の賢さがいけないのだよ」とか言って、空襲に巻き込まれるよう仕向けたに違いない。ここでも、ハサウェイのシャアと比べた善人っぷりが光る。また、ハサウェイは恋人がいるので、彼女を気にして、ギギを連れて帰らなかった可能性もある。シャアならどうだ?クェスを連れて帰ったことで自分の恋人に文句を言われてもうまく言いくるめ、自分の部下がクェスとの関係を嫉妬してもうまく言いくるめ、目的のために些事には目をつぶる大胆さ。根っからの悪人だ。
こう考えると、ハサウェイの人の善さが光るストーリーだった。映画を見た後ネットを検索したところ、ハサウェイは心弱っていた時に、誘われてテロへの道に引き込まれたらしい。テロ組織のトップかと思っていたら、雇われ社長だった。素直な雇われ社長ハサウェイと、起業家のシャア、差があって当然だったのかもしれない。
ちなみに映画自体は面白く、美しく、迫力満点だった。映画館から帰る車を操縦する時に(注:車には空中(立体駐車場)で乗り込んだ)、あやうくスピード違反の暴走をしそうになるくらい、臨場感のある良い映画だった。