「『ハンターキラー』に萌えた方ならかなり楽しめると思います。」オーヴァーロード 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
『ハンターキラー』に萌えた方ならかなり楽しめると思います。
ビビっとくる要素は人によって微妙に違うので、あまり強くは主張出来ないのですが、『ハンターキラー』に萌えた人のたぶん5〜6割くらいの方はそれなりに楽しめるのではないでしょうか。
戦場における緊迫感、武骨な俠気(オトコギ)と優しさ、最後は上手くいくに決まってるのにハラハラドキドキさせられっ放しでした。
生理的な感覚でいうと、『ハンターキラー』から潮風のような爽やかさを引いて、『ハクソー・リッジ』から2割くらいのむごたらしさとおぞましさを注入した感じかな。
話は変わりますが、第二次世界大戦におけるナチス、冷戦時代やスパイものにおけるロシアの残忍なイメージ……そういえば、戦争映画ではないのに『クリード』に出てくるロシア人も冷淡な人たちとして描かれていましたね。
アメリカ映画をたくさん観てると、アメリカ人が差別や格差を越えて団結するためにはいつも外部の強大で残酷な、慈悲の気持ちや後ろめたさを感じないで殺せるほどの悪辣な敵を必要としているように思えます。
政治家が国内をまとめるためにそのような手法をとることはお隣さんを含めたアジアでも多く見受けられますが、外国事情に疎い我々民間の一般人も、いつのまにかイメージ先行の先入観に囚われて外国の人たちのことをイメージしてしまうことがあることはしっかりと認識しなければいけないのだと思いました。
Ryoさん
コメントをお寄せいただきありがとうございます。
『インデペンデンス・デイ』のように侵略戦争を仕掛けてくるエイリアン相手なら、団結心も麗しいのですが、最近の現実的な国家間、民族間、宗教間のことになると、本当に難しい問題だと思います。
>「成敗すべきは邪悪なる敵」
ブッシュ大統領(息子)の時に、それをはっきり認識しました。敵を作ることは、政治家にとって色々都合が良い。米国に限らず。国内の問題を敵のせいに出来る(移民が自分たちの仕事を奪ってる、ドイツが繁栄できないのはユダヤ人のせいである、などなど)、敵に敢然と立ち向かう強いリーダーを演出できる、そのリーダーのもとに団結感が醸し出される、団結しない人に「非国民」というラベルを貼ることが出来る(ブッシュ大統領の時に、政府に反対意見を述べる人を un-American といって切り捨てるのが流行りました) . . .
きりんさん、コメントありがとうございます。
今のトランプ大統領も政策としては結果が出なくても(中途半端な状況でも)、不法移民やメキシコ関連のあれこれについては、人権上の配慮よりもアメリカの正義を脅かす相手として取り上げ、一部の国民からの支持につなげてますよね。
間違っていようがなんだろうが、排除しても心が痛まないで済むような対象に仕立て上げてる、とも言えるのかもしれません。
〉アメリカ人が
〉団結するためには
〉後ろめたさを感じないで殺せるほどの悪辣な敵を必要としている
↑それ、思いました。
「成敗すべきは邪悪なる敵」をイメージさせて観客を洗脳に導くアメリカの“プロパガンダ映画”・・
それに初めて気づいたのは大昔、若い頃に観た「キリング・フィールド」でした。
映画館の出口の模造紙には観客が書き込んで埋めつくした「感動!」「友情!」「正義!」の文字。
僕は政治のことはまだよく分かりませんでしたが、成敗される側のクメール・ルージュのゲリラの会話には字幕が付かない(!)事に えも言われぬ違和感を覚えて慄然としたのです。字幕を付けない⇒即ち「人間とは見なさない」という事ですからね。
警戒すべき映画というものも存在する。そのことを知った日でした。