「この世を支配するのはヒーローでもヴィランでもない何か」ミスター・ガラス とえさんの映画レビュー(感想・評価)
この世を支配するのはヒーローでもヴィランでもない何か
面白かったなぁ
「シャマラン流のアメコミ解釈」の続編
前作「アンブレイカブル」で誕生したヒーローのデヴィッドと、ヴィランのミスター・ガラス、それに「スプリット」の24人格を持つ男 ケヴィンも加わって、彼らが精神科病棟に集められ、治療が行われる
この映画が面白いのは「もしも、シャマランがアメコミ映画を作ったら」の世界観
ヒーローは
目からビームが出るわけでも、
空を飛べるたけでもない
ただ、怪力の持ち主で、どんなに強く打っても骨がおれないというだけ
ヴィランにしても、毒ガスを撒き散らすわけではない
つまり、アメコミ的な「あり得ないできごと」のオンパレードではなく「こういうことって、実際に起きるかも…」と思えてしまうところが、この映画の面白さだった
ケヴィンの役柄にしたって「24人のビリー・ミリガン」は実在した人物だし
全く有り得ないわけでもない
そもそも、アメコミで描かれる能力者(ヒーローたち)というのは
「人と違うことは、神から与えられたギフトで、その能力でヒーローになれる」と、
教室の隅っこでマンガを読んでいるオタクたちを励ます存在だった
しかし、現実世界では「人とは違う能力を持つ人間は抹殺すべき」という勢力が、ヒーロー側でも、ヴィラン側でもないところに存在している
と、この映画では描かれている
それがあらゆる差別を引き起こしているのだ
その中で「人の行動の先を読む」能力を持つミスター・ガラスは、ある行動を起こす
その物語は「X-MEN」のようであり「バットマン」のようでもあるけれど「何が善で、何が悪か」については、明らかに他のアメコミと解釈が違う
そこが、この映画の面白さであり、現実世界の怖さでもある
この世界は善と悪では分けられない複雑な多面体なのだ