「トイレの中で歌うな(笑)」きみと、波にのれたら みりぽんさんの映画レビュー(感想・評価)
トイレの中で歌うな(笑)
タイトルはネタバレなので置いといて…(一番の笑い処)
予告を何度か見ているうちに爽やかな世界観が気になって映画館に足を運ぶことに。
キャラが好きになれれば大満足できる作品と言える。
個人的には主人公の女の子がとても好きになれたので大満足。
水の質感やそれを通したキャラの顔の表現など印象に残るシーンが多く心に残る作品となった。
以下雑記。
見た目の印象そのまま、天然スウィーツな女子とクールなイケメンという王道な感じの恋愛作品。
予告編でほぼ話のあらすじが分かってしまう上に開始15分くらいでだいたいの人間の役割から話の展開が大まかに読めてしまうが、それはそれで変にひねりを加えて台無しにするよりはよいだろう。
予告では奇跡の出会いと銘打ったものの、恋人になるきっかけにやや物足りなさを感じた。
あの規模の火災だとすんなり救出することは難しいのでは。それくらいあっさりとしている。サスペンスドラマやパニック映画ではないので仕方ないが、トントン拍子で恋人になってしまうのは勿体ない。
やはり恋愛ものはデキるかデキないのかのハラハラ感が重要なので、あっさり結ばれてしまってはその後の展開は壊すしかなくなってしまう。
その壊れる部分もあっさりしていて、もう少し悲劇的な演出ができればよかったのかもしれない。あまり露骨に泣かせにくるとウザいのかもしれないが、あれだけの好青年なので勿体ないかと。
例えば約束の時間に遅れるから先に行ってて、の後に事故に遭うとか。その日に海にさえ行かなければ、と言った後悔があればもう少し死に重みが出たと思う。
伏線となった思い出も少し設定を生かしきれなかったと思う。
過去に主人公に助けられたから携帯のパスワードが分かった、というロジックなのは分かるが、それだと2回目は助けられなかったという悲劇的な結果の方が勝ってしまう。
しかも子供の頃と違って泳げるようになっていたのに、そんなに簡単に息絶えてしまうものかと。
徹夜の体力不足だけでは少しうーん…
遺品に対する主人公の知りたいという思いを魅せたいのであれば、例えば喧嘩していて何日も口を利いておらず、主人公の死に際の生活の様子を少しでも知りたいとか、
一緒に撮った動画のデータが残っていないかとか、
もう少しスマホ特有の魅せ方があったような気がする。
その為に急遽回想シーンを織り込んで辻褄を合わせをした感じが否めない。どうしてもその辺のご都合主義が作品を薄っぺらくしてしまう。
もしその過去に接点があった設定を活かすなら
本当は昔から知ってたんだよ、とか
2度目は助けてあげられなくてゴメン、というような台詞があってもよかったと思う。
ビル火災に謎の水が纏わりつくというのもこれでは完全にファンタジーになってしまい日常感がぶっ飛んでしまうので無し寄りの無し。
これだけは特に頂けないといった印象であった。
もちろん死んだ彼氏が現れる時点でファンタジーではあるが、あくまでもそれは主人公と彼氏の間だけの狭い空間で展開すべきであろう。
そうしないと超常現象を多くの人が見たらテレビ局が騒ぎ出すのでは?ネットで騒動になるのでは?と要らぬ妄想が膨らんでしまう。
ヒーローものでよくある主人公の身分は明かしてはいけないといったお約束と同様で、不思議体験はあくまでも主役たちの中だけで留めておく必要がある。
そうしないと消防士が必死の思いで消火活動をしているシーンも非常に薄っぺらくなってしまい、苦労が全く伝わってこなくなってしまう。
なんだか不思議な現象で勝手に鎮火してしまいました、では緊迫感が全く伝わらない。
今回のテーマは「水」であるが、その対極となる「火」を織り交ぜたのはよかったと思う。
なので見せ場のシーンでもう少し水と火がせめぎ合うシーンがあれば格好よかったのではないか。
例えば消防ホースの水が途中で出なくなってしまって、火に巻かれてしまい絶体絶命…!!
このビルは高すぎて水圧が届かないんだ!!
そこを彼氏の不思議な力で水を送り込んで間一髪で消火…!!
というようなギリギリの展開の方がリアリティがあるし、周囲の人間は超常現象とは気が付かないはずだ。
どう見ても水が空中に留まっていて壁の隙間があるのに下に落ちずしまいにはモブの消防士が謎の水の塊です!という台詞で思わずしょんぼり…
もし自分がその場に居合わせたらスマホで撮影するのに夢中になっていただろう。
これTwitterに上げたらバズって有名になれる!とか思ってそう。
あとクライマックスの後はいらないかな。
魔女の宅急便のように危機一髪の最大の山場を乗り越えたらそのままエンディング、どうしてもその後の説明が欲しいならエンドロールに止め画のスライドショーでいいので、それとなく後日談を描く方が最大の感動のまま終わることができてよかったと思う。
犯人逮捕のくだりはそこまで丁寧に説明しなくてもヤフーニュースのトップの画像をエンドロールに貼っておけばいいだけでは…。
全体的に尺が足りないというか時間の使い方が勿体ないかな。起承転結で言えば転まで引っ張り過ぎ、彼氏が死ぬシーンはもっと前か、思い切って死ぬシーンから始めるくらいでもよかった。
前半ののろけてるところはキャラが好きじゃないと退屈だろうな、死んでからものろけてるし。テンポ遅いなと。波に乗れてない。
もしそのおのろけを有効に使いたいならいっそのことTLに突き抜けてもよかったかもしれない。お色気路線。
ライフセーバーになるくだりもクライマックスの後で思い立つのは遅い。自分探しがテーマならそれだけをメインに彼氏の死から立ち直る様をまざまざと描き切った方が青春と言った感じではなかろうか。
オムライス、コーヒー、花屋、ライフセーバー、消防士、スナメリ…
2クールで収まるかなぁ…それを2時間?そうか…
全部説明しきってしまうと、ああそうなんだ…やっぱりそうなるのね、と少し寂しい気分になってしまう。敢えてオチははっきりさせずに観客の想像に任せてもよかったのかもしれない。
残った誰と誰がくっつくのか、と想像を膨らませつつ家路に着くのも映画の醍醐味ではないだろうか。
最後にひとこと。
妹てめえ…