10万分の1のレビュー・感想・評価
全6件を表示
思いもしなかった難病と向き合う2人
2020年。監督:三木康一郎。原作コミックは宮坂香帆。
題名の「10万分の1」は難病のALSにかかる人の確率のことです。
高校生の桜木莉乃(平祐奈)は、急に転びやすくなり、手から物を落としたり
するようになります。
幼なじみで憧れの男の子・桐谷蓮(白濱亜嵐)から、思いもよらず《告白》されて喜びの
絶頂。
体調不良で精密検査を受けると、10万分の1の確率で発症するALSと宣告されてしまいます。
私の親友も1年3ヶ月前にALSを宣告されたので他人事とは思えませんでした。
莉乃さんはとても転びやすくなりましたが、友達は最初に話せなくなりました。
言葉を発声するのが困難で口も回りません。歩行は初めはしっかりでした。
莉乃さんが、電車から降車しようと思ったら、立ち上がれない・・・パニックになります、
・・・ホントに物凄いショックですね。
友達の蓮くんは本当に心優しい青年で、梨乃の「やりたい事リスト」を書いたノートの
項目を一つ一つ叶えてくれる所は、感動でした。
原因も治療法もまだ見つからない難病ALS。
まさか私が?
まさか愛する人が?
と思いますね。
蓮は梨乃の現実をキチンと受け止めて、最善を尽くそうと前向きに未来を見つめる。
そんな2人に試練がこれ以上過酷にならない事を願うばかりでした。
(どうでもいい事ですが、白濱亜嵐くん、高校生にはとても見えませんでした)
良かったです
私が三木康一郎監督の作品を観たのは、過去に3作品だけかな。
その印象は、あまり捻らずに真っ直ぐに見せる監督だなと。私は結構好きなタイプの監督さんです。
それでですね、今回のこの作品もやはり真っ直ぐだなと思いました。
実在の病気と向き合う今回の作品は、三木監督に合っていたと思います。
まず序盤、平さん演じた莉乃の瞬き連発とか初々しいシーンが続くんですよね。
それが微笑ましくて、病気を発症する前から初々しい二人を応援したくなるんです。まあ、よく転ぶ時点で発症してると言えなくもないですが。
そして、もう二人を応援したい気持ちになってしまったから、病気を発症してからの数々のシーンは涙止まらなくなりましたよ。
それと、音楽が良いんですよね。それらのシーンを邪魔する事なく寄り添う様な音楽なの。
特に良かったのは挿入歌、二人を包む様な優しい歌声なんですよ。挿入歌にもしっかり涙腺刺激されました。
それで終わり方なんですが、これで良かったと思います。
これ以上進めると映画が重くなり過ぎてしまうと思うから。
では、軽い映画になったかと言うと、そんな事無いと思うの。
なんでかと言うと、中盤で二人の未来の形の一つをALSの先輩夫婦が見せてくれたから。
あの奥さんの笑顔は、この映画の中でも重要なシーンだと思う。
そして、奥さんのあのメッセージは付き添いが蓮でなければ言えなかった。
あのメッセージは、ALSを支える人だけでなく、いろんな人に届けたい言葉だったな。
私はこの映画、とても良い映画だと思いました。
原作者のあざとさを感じる
難病ものなんだよね。難病に罹った主人公が頑張る姿を見たら絶対に感動するの。本当に感動するのもあるし、「ここで感動しない自分って人間としてどうなの?」っていうのが入って感動するところもあるの。
むしろ病気になる前の主人公のキャラ起てのパートが面白かったな。
嫌なことがあると呪ノートに五七五でそれを書き付けて、それをイケメンに見られちゃうんだけど、それでも『自分でも変な子好きになったなって思うよ』って好きになってもらえる。「私がイケメンに好きって言われた!」って読者は思うよね。
それで嫉妬されてイジメられるんだけど、自分がイジメられてるときは華麗にスルーして、友達が巻き込まれたときは『私はいいけど周りを巻き込まないで!』と怒る。やってみたいよね。そして、この怒りかたなら「私でもできそう!」という気もする。事態収集が難しくなるとイケメン彼氏が救いの手を出して「困ったやつだなあ」みたいにやってくれる。
ここで読者は完全に主人公に感情移入するよねっていうか「私が主人公だ!」になるね。
そして難病を入れてくる。なんなら両親が亡くなっていてお祖父さんに育てられた事情をかぶせてくる。これは泣きます。原作者はそこを解って、計算して書いてるね。
病気に罹ってからのパートは、主人公が困って、主人公が頑張り周りがそれを助けるの繰り返しだから、話としては単調なの。「ここで感動しないと人間としてどうなの?」という気持ちを押さえて、原作者の計算も考慮したりすると、本当に単調な話になるよ。
平祐奈と白濱亜嵐は良かったね。
女性作家が描く思春期男子を見るといつも思うんだけど、性欲がほぼないね。実態はそんなことないと思うの。むしろ性欲が抑えきれなくてなんかやらかしそうな気がする。しかし白濱亜嵐が演じると「うん、そうだね」と納得感あって良かったよ。
優希美青は安定の良さ。まだ高校生もいけるけど、OLの役が観たい。
「平祐奈、演技うまくなったな」とか思いながらボーッと観るのに良い少女漫画原作映画だと思ったよ。
リア充を 背(せな)で感じる 登山道
主役の二人とも、左右対称の端正なお顔だなぁと思って見ておりました。なんだかよく転ぶ、そそっかしい娘だなぁと思っていました。しばらくして、あっ、病気のせいか?と気づいた次第です。
筋萎縮性側索硬化症 ALSを若い人が知るきっかけになる映画になるといいですね。
カラダが動くうちにしておきたいことを考えるきっかけにも。観ている目線は終活寄りだったりしていましたが、栃木県の高校生の設定で、東京に一泊旅行に行くとなってからは、気持ちも若返る。彼女は「する」ために言い出すわけです。彼氏はお土産は何にしょうかな?なんて子供っぽいことを言う。高校生にはちょっと辛い白濵亜嵐が言うもんだから、そのあとちょっとシラケ気味に。踏み込んだ会話もなかったので。重病で先がわかっている娘と婚前旅行ですから、試されている若者になった気持ちにもなりました。両親がいるとややこしいくなるし、絶対、結婚には反対して、純愛物にならないから、最初からいないことにしたのかな?彼氏の親も出さずに済むし。祖父役の奥田瑛二は70歳なのにカッコいいですね。喫茶店?洋食屋?まだ、トレンディドラマいけるかも。この映画、映画監督でもある奥田瑛二の感想を聞いてみたいですね。とりあえず、奥田瑛二を目指して、引き締めて生きようと思いました。
【”それでも、僕たちは前に進む・・” 人間の善性に溢れた純愛映画。奥田瑛二さんの存在が、しっかりとこの映画を引き締めてくれています。】
ー恋愛コミックの実写化映画を観るのは、いつ以来だろう・・。幾つかの要素に惹かれて、鑑賞。-
■印象的なシーンの感想
1.序盤は、少しコソバユイ感を抱きながら、鑑賞。
桐谷レン君(白濱亜嵐:ファンの方には申し訳ないが、初めて知った。男気がある魅力的な高校生を、しっかりと演じている。)と桜木リノさん(平祐奈:同じく、初めて知った。難しい役を健気に演じている。)は、友人のチヒロさんとシュウ君の陰ながらの応援もあり、両想いだったことが分かり、付き合う事に。
- カップルでもある、チヒロさんとシュウ君が二人のために陰ながら応援する姿が、実に良いのである。勿論、レン君とリノさんの人柄があってこそ、あの友人がいるわけであるが・・。-
2.リノさんの足には、傷があり、本人も気にしている・・。彼女の両親は亡くなっており、喫茶店を営む祖父(奥田瑛二:この人が、演技をするだけで映画全体が締まる。)に育てられているようだ。
ー 桐谷レン君が、初めて祖父と会うシーンが少し面白い。
初めて彼女の家に連れて来られて、奧田さんが出てきたら、それは、ビビるよなあ・・。 でも、角度90度でお辞儀をして大きな声で挨拶! 流石、剣道部の主将だな!ー
3.徐々にリノさんの身体に異変が生じてくるシーンの数々。医者から告げられるALC宣告。
- 祖父が、”大事な時に作るオムライス”を作り、二人でテーブルに座って食べるシーン。奥田さんの抑制した演技が二人の深い悲しみを観客に伝える・・。-
4.チヒロさんがリノさんには内緒で、ALS患者の高山さんと連絡を取り、高山さんに会わせるシーン。
- チヒロさん、素晴らしき友人である・・。バス停で待っていた桐谷君にリノさんを任せ、去るシーンなど、大人でもナカナカ出来ない配慮である。
◆そして、リノさんは、初めてALS患者で身体が動させない高山さんと会う。ショックを受ける二人だが、高山さんが、身体が動かせなくても“話し”、リノさんに”初々しい・・、僕の奥さんも昔は初々しかった・・”と言って、奧さんを揶揄ったり、リノさんに”別の身体に入れ替わっただけと思っている。中身は変わらない”と告げるシーン。
奧さんが、レン君に”貴方が頑張り過ぎては駄目よ!それが、リノさんにとっては、負担になるから・・”とサラっと大切なアドバイスをする・・。
◆この一連のシーンは、今作の中でも、派手さはないが”胆になるシーン”だと思う。何故なら、二人の思想が高山さん夫婦と会った事で、ポジティブに切り替わったシーンだからである。
5.レン君とリノさんの初めてのお泊り旅行。最初は一泊の筈だったが、リノさんの願いで”昔、両親と見た星空をレン君に見せたくて、”逃避行”するシーン。
- 最初は驚く奧田さん(この方をお爺さんと書く事に、違和感があるので・・、奧田さんと記載する。)が、旅行を許し、描かれないがレン君も来たという事は・・。二人を見守る親も偉い。そして、レン君がリノさんを背負って雪山を少し登り見た、星空。良いシーンである・・。-
6.リノさんが自分の病気をクラスメイトに話すシーン。
- 最初は、レン君が付き添い、そして、チヒロさんとシュウ君も駆け寄り、クラスメイトに”お願い”する。意地悪をしていた女の子たちも、励ます声を掛ける。善人ばかりであるなあ・・。表現の仕方は人それぞれだが・・。-
7.卒業式のシーン
-ここはもう・・。
そして、レン君が医学部に合格した事に対し、奧田さんが”頼むぞ!”とレン君の顔を見て、声を掛ける・・。-
<重いテーマを扱いながらも、鑑賞後、人の善性って良いものだなあ・・、と感じた作品。 ラスト、大切な女性をしっかりと守る決意をしたレン君は、もう立派な大人である。
三木康一郎監督が、そんな二人と、二人を支える多くの人々の姿を爽やかに描いた作品でもある。>
■補足
・容易に類推出来るのであるが、今作を観て”綺麗すぎる・・”とか”そんなに上手くいかないだろう・・”とか意見が出ると思う。
ALSの現実にスポットを当てた優れた映画は多数あるが、私はこの作品は、この描き方で良いと思う。何故なら、若者達が”難病に屈せず、前へ進もうとする姿”を描いた作品なのだから・・。
全6件を表示