岬の兄妹のレビュー・感想・評価
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ラストシーンをどうとるか
生活保護申請しろとか、そんなくだらんこと言う奴等は映画見んなよ。映画になんねーだろ。とまず悪態ついてみる。
岬に住む片足が不自由な主人公と自閉症の妹が、汚く逞しく生き抜く話だと思った。性に目覚めて売春を楽しむ妹だけど、自閉症だろうとなかろうと家に籠るより、誰かと接点をもつことが嬉しかったんじゃないかな。
あと兄は、売春させちゃうわけだから、モラルのないひどい兄だと評価では書かれてるけど、そうかな?私には「まりこ、まりこぉ!」って優しい兄にしか感じなかった。しかも「仕事したいのか」って聞いてるし、自閉症でも嫌なら嫌っていうよね。
性の存在ってなんかすごいなって、この映画見てつくづく感じる。ないところに接点できるし、気持ちなくてもできちゃうし、すれば感じちゃうし、なんかここにおいては、野生の動物と変わらないというか。おじいちゃんも小人もヤクザも学生も体が不自由な人も自閉症もこの部分においては単なる動物。
でもなぜかもそこに少しの気持ちも混ざる。
それは触れ合ったからこそ生まれる何か。
だけどそれは、服を着た瞬間からあっさりと消え、
また私たちは階級社会に戻っていく。
だからラストシーンの着信は、性で愛を知ってしまったまりこの始まりの合図では?と捉えました。
でも妊娠は気をつけて。
あまりにも貧乏だった時に
貴方だったら一万円払ってもいいから抱かせてちょうだいよ?とオカマバーで店長に言われた事があって、「 え?俺、今モテ期?」 と一瞬嬉しくなったが( 阿保か)すぐに冷静になって丁重にお断りした事があった。
身体を売る仕事の人って、こんな簡単に一時間で何万円も稼げて楽だなぁ。と思いながら、この映画の自閉症の妹さんが一回一万円という破格の値段で売春を続けるサマを見て、何のスキルもない資格も無い人が手っ取り早く稼ぐには売春しかないのかなぁ。
それでも踏みとどまって普通の仕事じゃ駄目なのかなぁ。と、思ったがそれ言うと映画が成立しないので本題に入るが、
足が生まれつき悪い兄が、突然リストラされて自閉症の同居している妹さんを食わす為に家の中でできる内職をするが、当然内職の売り上げなんて微々たるもんでティッシュペーパーを食ったりなんかしちゃってどうしようもなくなった時に、妹さんが襲われて一万円を渡されて有耶無耶になる事件が起きる。
これは...、金になる!と思った兄は大型自動車が停車休憩している駐車場で休んでいる運転手に営業をかけて妹さんに売春させて荒稼ぎをして念願だったハンバーガーのセット( ここ見てて悲しくなった)を嬉しそうにパクつく。
これに味をしめて、チラシなんか作ったりしちゃってどんどん荒稼ぎをする。妹さんには常連さんの小人の人に気に入られてリピーターになるも、避妊をしていなかったので妊娠してしまう。その子は結局堕ろしてしまう。
さすがに、子どもを堕ろした妹に売春を強要はできない兄。一度、首になった職場から再雇用の通達をもらう。めでたしめでたしと思いきや、妹さんの売春で使っていた携帯に着信が鳴る。
プルプルプル、プルプルプル、兄は携帯に出るのかどうか分からないままエンドロール...。
初めて、この映画を見た時は妹さんの自閉症の演技が凄かったと思ったが、今思い出すとそれほどでもなかったように思える。
印象に残っているのは劇中で、足の悪い兄に向かって言われた一言
「あんたは足が悪いんじゃなくて頭が悪いんだよっ?!」
容赦ない一言だけど、これだけキツイ事を言ってくれる人って貴重だよ?そんな事言ってくれる人に仕事の相談とかしとけば、こんな目に合わなくてすんだ筈。
探検家でエベレストに挑戦して滑落死した栗城史多さんには大量のアンチがいて「 もう山はやめろ、死ぬから 」 と散々言われていて、逆に賛同者は、「 栗城さんサイコー!もっとやっちゃって!」 と無責任に応援していました。
山を登るにはあまりにもスキルが無さすぎて、このまま続けると本当に死ぬぞと助言してくれたのはアンチの人でした。自分に対してキツイ意見を言われた時にすぐに反発するのではなく、意見をちゃんと聞いて受け入れるのも人生の処世術だぞ?
障害者の兄妹
足の悪い兄と自閉症の妹の話。仕事をクビになった兄が妹に売春させる。金がないながらもなんとか生きてる。
妊娠してしまい、悩みながらも堕ろす。ラストは岬で電話がかかってきて終わり。
何の電話かは視聴者しだい
一生懸命生きている兄妹
兄が障害をもつ妹に売春をさせるのは倫理的には良くないことだし、犯罪です。でもこの2人が生きていくためにはそれしかなかったんでしょうし、兄をひどい人だと責めることは私にはできないなと思いました。
私が気になったのは、妹・真理子の客の身体障害者の方です。兄が彼に真理子との結婚を頼みに行ったとき、彼は真理子のことは好きではないと答えていました。でも本当は彼は真理子のことが好きだったんじゃないかなと思います。障害者2人で生きていくことはできないと思って、突き放したように感じました。希望的観測かもしれませんが。
あと、兄の友人のはじめさんはなぜ兄に仕事や支援制度を紹介しなかったのかがずっと疑問でした。警察官ですしなにかしらアドバイスなどしてあげればよかったのにと思います。
問題作といえるが個人的にはすき。
自閉症の妹をもち自らも片足をひきづるお兄さん。
生活に困窮するなか、妹を売春させる。
1度味をしめてしまえばいけないこととはわかりつつもやめられない。
うんこなすりつけるシーンがトラウマすぎてもう忘れられない(笑)
どんなラストが待っているかなと思ったけどラストは観る者に解釈委ねる系でしたね。
妹が恋した?小さなお客さんだったらハッピーエンドでいいな(´・ω・`)
リアルがゆえのグロさ
グロい。この言葉が適切かどうかわからないが、私は終始グロいと思いながら観ていた。
この兄弟の道のりは、どんな選択をしたって苦しくて行き詰まって
それは有識者の正しいアドバイスなんかが届くものではなくて、
人生の蓄積、経験則、思い込み、いや、そのどれもが現実味を帯びた今この瞬間のしんどさに繋がっていて、もうその方法しか見えない、とれない。
そこに愛があるからこそ、切っても切れない縁だからこそ。
どんどん繋がっていく家族の輪も。分かっていないようで、分かっているような妹も、確実に女になり、母となり、そのささやかな感情を願ってあげたい兄がいて。
でも、それが届かない。
感情があるからこそややこしい。行き詰まる。どうしてこうなったのか、もうその原因すら見えない。
最後のシーン、岬に立つ妹に、中学生の言った「潮の香り」を思い出した。母なる大地の海。
しかし、電話がなった瞬間、女の顔になった妹に。
鎖に繋がれ家に閉じ込められていた妹を思い出し、もう何も、先のことなんて考えられなかった。
想像の中の極限
予告を見て「エグい作品なんだろうな」と思っていたけど想像してた一番イヤ残酷さよりも少しだけユルくて助かった。
貧困は思考を奪うという事を上手く伝えていると思う。生活保護を受ければいいのにと思うけど、申請してから受理されるまでの時間が待てないくらい切羽詰まっている状況や、兄が頼れるのは友人の警察官ただ一人だけの状況からプライドが高くて赤の他人に助けを求める事が出来ないのではないかとも想像できる。また、友人の警察官も腐れ縁程度で本気で兄妹に向き合ってはいないのも厄介事に巻き込まれたくないというのが現れててリアルに感じた。
多分だけど、映画じゃない現実でもっと酷い事は無数にあると思う。その中のひとつをエンターテイメント化した作品だと思う。
本編と関係ないけど、マリコを買った未成年の子が行為を録画されていじめのネタにされるのかと構えていたのでそういう胸糞が無くてよかった。ナイス糞
役者の演技素晴らしかった。
兄がプライド高くてキレやすいところとか、妹の自閉症の演技、道で寝転がって泣き叫ぶところとかすごい。近年もてはやされてる美男美女のキラキラ映画では絶対に見れないので人間を観たという感じでほんと良かった。
評価は賛否で別れてるみたいだけどそれはただの好みだと思う。
赤貧の描写に浮かぶ「ユーモアと抒情」
2年半前に観た時は嫌悪感と貧乏描写に辟易して、
やっとお終いまでなんとか見届けた・・・
そんな感じでした。
最近、片山慎三監督の「さがす」を観て、なんとなく
「岬の兄妹」をもう一度観たくなりました。
片山慎三監督はボン・ジュノ作品の助監督を務め、
この「岬の兄妹」は自分で資金を集めてた自主制作映画です。
監督・製作・プロデューサー・編集・脚本を自ら務めて
劇場公開に漕ぎつけて注目を集めました。
作風はボン・ジュノ監督作品の影響か、実際に起こった事件を題材にすることが多い。
《ストーリー》
右足に重い障害を持つ兄の良太が仕事を解雇されて、
生活に困窮する。
兄は思い立って知的障害のある妹の真理子に
売春をさせて生計を立てるようになる。
真理子は時々、行方不明になるけれど、明るい性格で、
売春も「お仕事」と呼び半ば楽しんでいた。
そんな生活を続けていた矢先、真理子が妊娠をする。
常連の小人症の客に「真理子と結婚してくれませんか?」と頼む兄の良太。
小人症の客は、「俺が小さい男だから、釣り合うと思ったんだろう」
と怒って、拒否される。
ユーモアとペーソス漂うシーンです。
すぐに行方不明になる真理子をロープで繋いで、扉に鍵をかけて
閉じ込めたり、売春をさせる酷い兄だけど、
そこまで切羽詰まったギリギリの生活苦を見せて、
お金がないことの辛さをとことんに描写する。
そして真理子は、どうにかこうにか中絶手術を受けることが出来た。
真理子は退院後、ひとり徒歩で岬に向かう。
岬の突端で考え深そうに海に見入る真理子。
その真理子の胸に、もしかしたら、母性が芽生えていて、
育ちつつあった胎児が真理子になんの承諾もなく、
勝手にただ流されてしまった。
そんな悲しみに暮れる賢い女の子・・・
真理子が美しく、そして聖なる母、母になれなかった聖女・・・
そんな寂しい背中が切ない。
そんなラストで、
知恵遅れに生まれた女の哀しみ。
突然、思い至って、私は激しく胸打たれたのでした。
生きてくって大変だ
兄・良夫がとにかく浅はか。だけど見ていて嫌な気持ちにならない。愛嬌があるのかな?
生活保護とか、仕事探すとか、もっとやることあるだろと言いたくもなるが、
「なにもかもお前のせいだ」
と言いたくなるくらい追い込まれているというのがよくわかった。
そして何より、真理子役の女優さんが凄かった。何も違和感が無かった。丁寧な役作りが感じられた。すごい。
肇、お前が一番介入しなきゃダメだろ、っていう感じ。良夫に言われた「偽善者」という言葉が綺麗に当てはまるキャラクターだった。これは観ている側にもグッサリ刺さる言葉だったと思う。
以下、印象的なシーンなど。
ヤクザの客の後、目張りをはがすシーン。
解放感や、吹っ切れた感じもするが、そこには諦めもあったのかもしれない。
妊娠のことを客に知らせに行くシーン。
真理子の本当の気持ちはわからないが、あの大泣きには胸が締め付けられた。
ラストのシーン。
電話が鳴る。台詞は無い。二人の表情がとても良い。
真理子はあの動きと話し方が知的障碍者としての彼女の特徴を表しているけど、喋らずただ黙っていることで、一人の人間、一人の女性としての彼女の気持ちが全部表情に出ている感じがした。すごく良いラストだったと思います。
それから、忘れてはならないのがプールのシーン。
奇想天外なウンコバトルには大いに笑わせられました。
真理子と周囲の会話が嚙み合っていないところは、微笑ましくもささやかコメディが忍ばせられていて、そのお蔭で暗くなり過ぎず、あくまでもあの兄妹が逞しく生きている様を切り取った映画になっていると思います。
私は偽善者なんだなと悲しくなる作品
この兄妹の演技凄かったです
平和ボケしてる私に存在すら分からなかった
社会的弱者を見事に見せつけてくれたんだなと
兄妹のしてきたことは目を覆いたくなるような内容
生々しくてちょっとキツかったです、、
でも、笑わせにきてるシーンもちらほらと。
妹が健常者だったら、こんなこと望んでないと思うし
普通に恋愛をしてたんじゃないかなと
悲しくなってしまいました
こういうお仕事されてる人もいますが
皆さんそれぞれ事情がある人がほとんどだと思います
作中で利用する男性たちもこういうことはダメだよと
止めてくれる人もいなく、世の中そんなに
綺麗じゃないんだろうなというのがリアルでした
肇くんは仕事して家庭持ってて、兄妹たちを気にかけてあげてた方だと個人的には思います
プライベートなわずかな時間を人に割くって難しいと思います
肇くんの奥さんなんかは子供が生まれから
余計に関わりたくないだろうなと感じました
真理子に対しても、冷たくするで終われるシーンも
人として切り捨てると冷たいから少しだけ相手をする
偽善者の嫌々感があるのもリアルでした
でもこの奥さんの対応も間違ってないと思います
脚が悪い、頭が悪い、性格が歪んでる
お兄さん1人を責める気にもならないです
あの人格になるまで苦しかったろうなと思います
ループして終わるのが映画らしいなと思いました
この兄妹はここから抜け出せない
社会で受け止めないといけない
ノンフィクションなんだと思います
でも何もできない
知ることしかできない
仕事を選んで働ける、好きなように生きれる
幸せを感じるしかなかったです
自分が偽善者と分かる後味の悪い作品です
ひどい話だ。
こんなことがあっていいのか。
生活していくのにはお金が必要。
障がいのある妹を養って行かなければならない責任がある。けど、自分は足が悪い。
妹は嫌じゃなさそう、それならお金入るし
いいかって、普通はならないんだけどな。
普通じゃないんだよなー。学生たちに
金を奪われそうになったとき、自分の便で
攻撃、これも私は考えたこともない反撃だった。
妹はわかっていない。けど、
わからないなりにも、何かを感じ取っていて
泣きわめいたり、ちょっと不安定になったり、
そこらへんがすごくリアルだった。
見終わった後、なんだかズーーんと気持ちが重くなる。
兄弟に障がい者がいたら、
頼れる人がいなかったら、どうなってしまうのだろう。なにか救ってくれる補助やら何かがあるのか。難しい問題だ。
人間は変わらない話
終わり方が深い。
人間は変わらない。
なぜ妹を殺せなかったのか、なぜ高い金を払って中絶させたのか、ということが終わりを見るとわかる。
物語が進むにつれて、最初はただ生きることの障害でしかなかった妹の心情が見え、主人公も心が少しずつ動いていく。
貧しい生活の中にも心は見えるけど、心よりも当面のお金を優先する主人公。
それがとても人間臭い。臭すぎて、顔をそむけたくなるくらいなんだけれど、それが魅力的にすら見える。
これはやるせない話なんだろうか。価値観の多様性の話なんだろうか。
よくある底辺の人を取り扱ったストーリーとは一風変わった終わり方を見せてくれたので、この独特な気持ち悪さに満足できた。
救いがなくひどい映画なのにひきこまれる
救いがなく、ひたすら暗い?映画なので、好きではないです‥が、みはじめてから見終わるまで、終始引き込まれてしまいました。こんなこと思ったこともないですが、俳優人の演技がすごい!!
暗い映画とかきましたが、本当に暗いのかはよくわかりません。私の価値観では妹に売春させる最悪の兄ですが、妹は不快ではないとすると、被害者がいない?
ともかく、和田さんと松浦さんの演技がやばい!
お、、、重い。
ロードショーから気になってはいたんですが、アマプラで視聴しました。
まりこ役の人、演技うまい。
ギルバートグレイプのレオナルド・ディカプリオ並みです。
重い中にクスッと笑えるところがあったり、えっちしすぎてアソコがただれた?薬塗ってあげてるような生々しいシーンあり、アホ高校生にう○こなすりつけたり…警察官のくせに生活保護を知らなさそうなアホ友達?やら。もうこれでもか!って感じでした。
なんだかなぁと思いながら、それでも引き込まれたので映画としては面白かったんだと思います。
胸糞系なのでおすすめはしないかなぁ…(;´Д`)
衝撃的すぎてやめられなかった。
たまたまWOWOWつけっぱなしにしてたら始まって、観出したら止まらない。
なんですか?これは・・・
障害者の兄と自閉症の妹の話。
ここは日本やのに。生活保護なんで受けないんだろう。
妹を売春させるなんて、兄が馬鹿でろくでなし過ぎてヘドが出る。
警察官の友達もなんで市役所に連れて行かない?
最後は身投げなのだろうか。
謎ですが、私なら死ぬ。
すみません。こういう映画見るとしんどくなるんです。
万引き家族の方が数百倍救われたのに。
リアル感が少し…
兄妹の演技は良く
全体的に良かったと思うのですが、
障害者年金とか
生活保護とか
失業手当とか
もっと追い込まれるところをリアルに描いてくれたらなと思いました。
物語以前の状況でノイローゼ気味になっていたとか、推測は出来るのですが、周囲や行政の助けが得られず八方塞がりで事に及んでしまった感がもっとあればなぁと…
落ちた後は良かったので
落ちるまでのストロークが△
友達警官に言われてますが、
上記が無いとお兄さんが頭悪過ぎに見えて…
大前提の設定便りだと、一体何を描きたかったのか?と思ってしまって安易にシチュエーションを持ってきたのかなと、こういう題材なんで、、、、、
社会派じゃない所が良い
気になる箇所は幾つかあった。特に警官の友人から社会保障を巡る話が一度も出てこない所はモヤモヤを残す。ティッシュの銘柄がKYなのもちょっと寒い。
その辺を差し引いても近年の日本映画でこれをやってる人多分いないんじゃっていう意味でも傑作。とことん貧乏でバカで、人間としては欠陥だらけなんだけど、最後の最後の所でギリギリ憎めない兄貴。精神障害の負の部分を観る人に突きつけながらもどこか明るく癒しさえもたらす妹。
性的な過去を巡る兄と妹の微妙な関係性も含めて今村昌平の映画のようだった。
ラストは妹が死ぬとしたい気もする所だけど、予算的に無理だろうな。決して悪いラストじゃないけど、代替品な感じは否めなかった。
白眉は妹がヤクザとセックスしてるのを見せられると同時に少年時代に妹のオナニーを目撃した事を思い出すというくだり。このシークエンスがあるから、社会保障に頼らないという筋がギリギリ成立している。
「兄は妹の幸福のために売春をやめなかった」とも取れるし、「自分もそんな事で興奮するクソ野郎だから踏ん切りがはっきりついたのだ」とも取れる。共感させるのではなく、目を見開かせるという手段の映画がもっと観たい!
この岬から
時々日本のインディーズ界から、韓国映画に匹敵するような力作が生まれる事がある。
あのポン・ジュノや山下敦弘の下で学び、低予算で90分ほどながらまるで3時間の重量映画を見たようなKO級、日本映画も捨てたもんじゃないと思わせてくれる、俊英・片山慎三監督の鮮烈デビュー作。
ある寂れた港町。
造船所で働きながら自閉症の妹・真理子を養う良夫だったが、不自由な片足を理由に解雇されてしまう。
そんな時良夫は、真理子が町の男相手に体でお金を得ていた事を知る。
最初は激しく叱責するが、生活はド困窮。妹を使って、売春の斡旋を始める…。
とにかく描かれている題材全てがえげつない。
貧困。生活は底辺どころか、クソ溜め。
障害。片足が不自由な兄と、自閉症の妹。
犯罪。法に反する売春の斡旋。
暴力。他の売春斡旋業者から袋叩き。
性。客から連絡を受け、体で稼ぐ。
他にもいじめやとあるシーンでのう○こ攻撃のお下劣描写。
それらを生々しく、赤裸々に。
人によっては反吐が出るほど受け付けないだろう。
確かに不快で胸クソ悪いが、ズシンと重苦しく響く題材、監督の入魂、無名のキャストの熱演で引き込まれた。
良夫は典型的なクズだ。
自分より“下”の立場の者には強く出、自分より“上”の立場の者にはペコペコ弱々しく。
ズル賢く、何より妹に売春を斡旋させるという人道外れ。
でもクズなだけであって、悪人ではない。
不自由な片足で解雇されたのは同情に値するし、妹を使って売春斡旋させている事に少なからず葛藤や罪の意識も滲ませている。
兄として人として、道から外れた事をしているのは分かっている。だけど、こうでもしなきゃ生きていけない…。
自閉症の妹・真理子は無垢で天真爛漫だが、ただそれだけではない。
鍵を掛けておかないと一人で勝手に家を出てふらふらする事はしょっちゅう。
本当に手を焼き、その無垢で天真爛漫さが見てて時折イライラもさせ、良夫の苦労も分かる。
一方がクズ人間で、一方が同情出来るのではなく、両者にそれぞれがある人物描写が秀逸。
無名ながら、それらを体現した松浦祐也と和田光沙の迫真の熱演は言うまでもなく。
人間の醜さをさらけ出した松浦も素晴らしいが、自閉症という難役に加え、際どい濡れ場の数々も体当たりで披露した和田に圧巻。
また、兄妹をよく知る友人の警官役で、『男はつらいよ』の三瓶ちゃんこと北山雅康が好助演。良夫に対して言う、「お前は足が悪いんじゃない、頭が悪いんだ!」の台詞が辛辣ながらも友を思い、響く。
売春で食っていく中で、兄妹の心に変化が。
斡旋を続けながらも罪悪感を感じる良夫に対し、真理子は「お仕事する!お仕事する!」と積極的に。ある一人の客に好意を抱いたような素振りも。
また、真理子の売春は何でもOK。本番や最後まで、アレも付けず、○出しも。故に…。
妊娠が発覚。
こんなクソ溜めのような最低最悪の中でも宿った“生命”。
良夫は藁にもすがる思いである客の下に頼み赴くが…。
突き付けられる痛々しい現実。
障害持ちの兄妹、明日の身も分からない困窮…無理もない。
選択肢は一つしかなかった。
一体、どうしてこんな惨めな人生を…?
何処で道を踏み外した?
売春の斡旋を始めた時から?
解雇された時から?
地方の貧困地で生まれたから?
自分たちの人生はそう生きていくしかない宿命(さだめ)なのか…?
生きていく事は辛く、苦しい。
それでも生きていきたい。
生きていかなければならない。
生きていれば…
宙に舞う売春斡旋のチラシの美しさ、段ボールを剥がし薄暗かった部屋を差す眩い陽光、夢で見た走れる嬉しさ…。
こんな人生を照らす光や希望が、いずれ、きっと…。
でも、今はまだ。
また変わらぬ日々が始まる。
この岬から。
それはまるで、これから日本映画界に挑んでいく片山監督の姿そのものに見えた。
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