「赤貧の描写に浮かぶ「ユーモアと抒情」」岬の兄妹 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
赤貧の描写に浮かぶ「ユーモアと抒情」
2年半前に観た時は嫌悪感と貧乏描写に辟易して、
やっとお終いまでなんとか見届けた・・・
そんな感じでした。
最近、片山慎三監督の「さがす」を観て、なんとなく
「岬の兄妹」をもう一度観たくなりました。
片山慎三監督はボン・ジュノ作品の助監督を務め、
この「岬の兄妹」は自分で資金を集めてた自主制作映画です。
監督・製作・プロデューサー・編集・脚本を自ら務めて
劇場公開に漕ぎつけて注目を集めました。
作風はボン・ジュノ監督作品の影響か、実際に起こった事件を題材にすることが多い。
《ストーリー》
右足に重い障害を持つ兄の良太が仕事を解雇されて、
生活に困窮する。
兄は思い立って知的障害のある妹の真理子に
売春をさせて生計を立てるようになる。
真理子は時々、行方不明になるけれど、明るい性格で、
売春も「お仕事」と呼び半ば楽しんでいた。
そんな生活を続けていた矢先、真理子が妊娠をする。
常連の小人症の客に「真理子と結婚してくれませんか?」と頼む兄の良太。
小人症の客は、「俺が小さい男だから、釣り合うと思ったんだろう」
と怒って、拒否される。
ユーモアとペーソス漂うシーンです。
すぐに行方不明になる真理子をロープで繋いで、扉に鍵をかけて
閉じ込めたり、売春をさせる酷い兄だけど、
そこまで切羽詰まったギリギリの生活苦を見せて、
お金がないことの辛さをとことんに描写する。
そして真理子は、どうにかこうにか中絶手術を受けることが出来た。
真理子は退院後、ひとり徒歩で岬に向かう。
岬の突端で考え深そうに海に見入る真理子。
その真理子の胸に、もしかしたら、母性が芽生えていて、
育ちつつあった胎児が真理子になんの承諾もなく、
勝手にただ流されてしまった。
そんな悲しみに暮れる賢い女の子・・・
真理子が美しく、そして聖なる母、母になれなかった聖女・・・
そんな寂しい背中が切ない。
そんなラストで、
知恵遅れに生まれた女の哀しみ。
突然、思い至って、私は激しく胸打たれたのでした。
コメントありがとうございます。
作品というのは作り手の心の表現だと思います。
その表現をどのように捉えるのかは、見る人にとって異なりますが、作り手の心の芯を捉えることはなかなか難しいと思います。
私の妄想が正しいなどと思ったことはないのですが、私の主観から作り手の主観に触れることができたのではないかと思うことはあります。
今回は心にあったモヤモヤをたまたま琥珀糖さんのコメントを拾ったことで「絶対何か隠されてテーマがある」と確信したことで見えたものです。
ありがとうございました。
いつもありがとうございます。
さて、
しばらくの間考え続けていました。
この作品に関する私の認識が間違っている気がしてなりませんでした。
過去の自分のレビューをいくつか振り返っていたら、「さがす」で琥珀糖さんのコメントに、監督が同じだとあったのを拾い出し、この修正にたどり着きました。
私的には納得しました。
ありがとうございました。
いつもコメントありがとうございます。
さて、この作品は多義的なのでしょうか。
それぞれの感想に違いがあり、面白いと思いました。
監督はあの「さがす」の方でしたか~
彼の、その、すべて描き切らないところが作品に余白を与えて、見る人によって感じ方を変えているのでしょうか。
非常に重圧感のある作品でした。