「「朝がいい。朝ご飯が好きだから」」風をつかまえた少年 Teiranさんの映画レビュー(感想・評価)
「朝がいい。朝ご飯が好きだから」
2001年になっても、雨乞いをして、干ばつをしのげると
信じているような村で、「学ぶこと」によって、風力発電に
成功した少年と、その家族の物語
風力発電そのものについての試行錯誤がメインの話と思いきや、
この、マラウイという国の、食べるものにもことかく貧困の実態と、
学ぶことの困難さや、昔ながらの風習に固執する頑なさにより、
貧しさからなかなか抜け出せない人々のドラマが主な話でした
原作を読んだという夫の話では、軽めのノリだったそうですが
この映画は、重いトーンで話が進みます
貧しい暮らしぶりのドラマを観るのは初めてではないので
衝撃を受けるほどではない・・・しかし、監督兼主人公の少年の
父親役のキウェテル・イジョフォーをはじめとして、それぞれの
俳優たちの名演により、説得力のある内容になっていたと思います
印象的だった場面
干ばつで、一日の食事が一回、になった時、
「食事はいつにする?」と聞く父親に
「晩ご飯。お腹がすいてると眠れないから」と答える娘
「朝がいい。朝ご飯が好きだから」と答える主人公ウィリアム
う~ん・・・(家族を食べさせていかなければ)という親の立場で
ないから出てくる言葉
しかし、ポジティブだなぁ。というか、そうならざるをえないか・・・
だからこそ、この村の人々にとっては夢物語の様な発想を
現実のものにしようと思えたのだろうし
絶対に、子供たちを飢えさせないと誓う母親
「食べるものがなくなったら、自分の腕を切り落してでも食べさせる」
静かな気迫がこもっていました
風力発電で、干ばつをしのげるかもしれない、それを現実的な
規模のものにするには、父親が使っている自転車が必要だ、
分解するから返すことはできない、と言うウィリアムに、
食べ物を手に入れる為に必要な自転車が無くなる?
父親の耳には、夢物語のように聞こえる風力発電
自分の食べる食事すら我慢して、飢え死にしそうな未来が
待っているというのにこいつは何寝言言ってんだ・・・という
思い故が、キレる父親の頑固さが、この国の貧しさの根底にあるようで
やりきれないような切ないような気持ちになりました
細かい所では突っ込みどころがなくはないですが
多分、映画として、実在の人物をモデルにする上で
妥協せざるを得なかった部分もあるのでしょう
実際は、描くに描けない話もあったのでは・・・と思います
ラストの場面
父親が、息子ウィリアムに言った言葉
「学校へ、行きなさい」
は、胸に迫るものがありました
学ぶことにより、貧困から脱する事が出来たという実感が
その言葉にこもっていて・・・
特に人に強くお薦めしたいって程ではないけど
いい作品だと思いました